人事担当者が退職予定者と退職面談を行う理由、流れ、質問方法を押さえておかなければ、相手から本音は聞き出せません。そのため、退職面談のやり方を押さえておきましょう。
この記事では、人事担当者向けに退職面談のやり方をご紹介します。職場改善に反映させる方法までご紹介しているため、ぜひお役立てください。
目次
人事担当者が行う「退職面談」とは
人事担当者が行う退職面談は、退職予定者から離職理由を聞き出すための面談です。
ハーズバーグ二要因理論によると、仕事の欲求は「衛生要因」と「動機付け要因」に分けられることが判明しています。
- 衛生要因:従業員の不満を取り除くことはできるが、満足に至ることはない
- 動機付け要因:従業員を満足させることができるが、満たさなくても不満に持たれることはない
つまり、不満を持たれて退職されないように、衛生要因を特定して職場改善する必要があります。
衛生要因についてよく理解しているのが退職予定者であるため、退職面談を行い聞き出します。
ハーズバーグの二要因理論について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『ハーズバーグの二要因理論とは?職場改善への使用方法、成功事例を紹介』
人事担当者が行う退職面談の目的
人事担当者が退職面談を行う目的は3つです。
職場環境の改善に役立てるため
退職者から退職理由を聞いて職場改善していかなければ、次々と人材が流出してしまいます。
「待遇が悪い」「労働環境が悪い」「職場の人間関係が悪い」など多くの問題がありますが、把握せずに放置すると人材流出は防げません。そのため、社内環境を整備するために、退職者から職場の不満を聞き出します。
職場環境を構成するのは主に5つです。5つの要素の中に不満がなかったか尋ねてみましょう。
■職場環境を構成する要素
会社の評判を落とさないため
TwitterなどSNSが普及して、誰でも気軽に情報発信ができるようになり、多くの人が情報交換しています。そのため、会社の評判も広まりやすくなっています。
退職者を冷遇に扱うと会社の悪い評判が広まる可能性があるため注意しなければいけません。会社の悪い評判が広まると「内定先の会社の評判が気になりネット検索して調べてみると、悪い評判が書かれていて不安になった」と内定辞退されてしまいます。
また、求人への応募者も少なくなります。このような問題が発生するため、会社の評判を落とさないように気をつけましょう。
社員をアルムナイ採用するため
近頃は退職した社員をアルムナイ採用(出戻り雇用)する動きが活発化しています。その理由は、少子高齢化で労働者が不足しているためです。そのため、退職者と縁を切るのではなく、良好な関係を築いて出戻り雇用できるように準備しておくことが大切です。
異なる環境で働いてみて、前の職場が合っていたと気づく人も少なからずいます。退職した社員をアルムナイ採用すれば、採用コストや教育コストが減らせます。また、企業文化を理解しているため即戦力として活躍してもらえるでしょう。
現役社員から不平不満が出るリスクがあるため、アルムナイ採用について理解を深めておきましょう。
アルムナイ採用(出戻り雇用)について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『約2割の企業が取り組み始める出戻り雇用!制度の整え方を解説!』
人事担当者が退職面談で質問すべき事項
人事担当者が退職面談で質問すべき事項は4つあります。
退職理由
職場改善に役立てるために退職理由(衛生要因)を聞き出しましょう。
[質問の例]
- 退職を決めたきっかけは何でしたか?
- 働いている中で、不満に感じていたことはありますか?
- 他の会社で働く際に、どのような点を重視したいと考えましたか?
会社に対する評価
会社に対する評価をしてもらうと、自社の強み、弱みを把握できます。
[質問の例]
- 職場環境についてどのように感じていましたか?
- 企業文化について、どのように感じていましたか?
- 所属する部署の上司のマネジメントはどう思いましたか?
- 所属する部署のチームワークはどうでしたか?
- 業務の負荷、仕事の進め方で改善できると感じていたことはありますか?
- 待遇や福利厚生についてどのように感じていましたか?
退職後の働き方
退職後の働き方を尋ねれば、退職者が今後、どのようなキャリアを築いていきたいかを把握できます。この質問は、再雇用や副業人材としての働き方を探る際に有効的です。
[質問の例]
- 退職後、どのような働き方を考えていますか?
- フルタイムの仕事を続ける予定ですか、それとも他の形態を考えていますか?
- 今後のキャリアにおいて、特に重視したいことや目指していることはありますか?
- 退職後、どのような働き方が自分に合っていると感じていますか?
- 副業についてどう思いますか?
- フリーランスや独立を考えたことはありますか?
- どのような分野で活躍したいと考えていますか?
退職までのスケジュール
円滑に退職手続きが進められるようにサポートするために退職までのスケジュールを確認しておきましょう。
[質問の例]
- 退職日までのスケジュールはどのように考えていますか?
- 退職日までに、どのような引き継ぎ作業を行いたいと考えていますか?
- 退職日までの間、何か特にサポートが必要なことはありますか?
- 同僚や上司との最後のミーティングなど、調整しておきたいことはありますか?
人事担当者が行う退職面談の流れ
人事担当者が行う退職面談の流れは以下の通りです。
- 労いの言葉を伝える
- 転職状況を聞いてサポートする
- 待遇面や職場環境など会社を評価してもらう
- 出戻り雇用制度について説明する
- ここでは、各手順について詳しく解説します。
労いの言葉を伝える
まずは、退職者にお世話になった感謝と会社に貢献してくれた敬意を表す労いの言葉を伝えましょう。思い出に残る出来事があれば、エピソードを交えると親しみが増します。
労いの言葉の例
- 「〇年間おつかれさまでした!急な依頼に快く引き受けてくれて助かりました」
- 「〇年間おつかれさまでした。〇〇さんの笑い声が聞こえなくなるのは寂しいですが、新しいスタートを応援していますね。」
転職活動の状況を聞いてサポートする
退職者と良好な関係を築くために相手の将来を応援しましょう。聞ける範囲で転職活動の状況を聞いて会社側がサポートしてあげます。
例えば、転職活動中の場合は有給休暇の取得を許可してあげましょう。
また、転職先で紹介状を提出する必要があり、依頼された快く引き受けてあげましょう。もちろん、支障が出ない程度のサポートで構いません。このようなサポートをすることで、相手と信頼関係が築けます。
待遇や職場環境など会社を評価してもらう
次に職場環境を改善するために、待遇面や職場環境など会社を評価してもらいましょう。退職理由の定性データを聞き出したいときは、人事担当者が退職者に質問していきます。その一方で定量データを収集したいときは、退職アンケートに回答してもらいます。
退職者の退職理由の調査方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『退職理由の3つの調査方法!本音を聞くためにどの調査方法を選ぶ?』
出戻り雇用制度について説明する
最後に元社員を再雇用する出戻り雇用制度(アルムナイ採用)があることを説明します。アルムナイ採用のサイトを運営しておくとスムーズです。
また、退職者との縁が切れないように、元社員も参加できる社内イベントを計画したり、元社員向けの広報誌を作成したりしましょう。
何よりも大切なことは、人事担当者が元社員と良好な関係を築くことです。良好な関係を築いておけば、出戻り雇用がしやすくなります。
人事担当者が退職面談を行う場合のポイント
人事担当者が退職面談を行って、退職者と良好な関係を築くためには以下を意識してみてください。
カジュアルな形式で行う
人事担当者の退職面談はカジュアルな形式で行いましょう。その理由はカジュアル形式の面談を行うことで、退職者から本音を引き出せるようになるためです。相手から退職理由の本音を引き出すためにも、人事担当者も自己開示するようにしましょう。
退職面談する相手を適切に選ぶ
退職面談の担当者には中立的な立場の人を選びましょう。人事担当者が行うのが一般的ですが、「経営者」「役員」「上司」などが退職面談することもあります。海外では退職面談をアウトソーシングして、退職理由の本音を聞き出すのが主流となっています。
第三者機関による調査を依頼すれば、退職面談の実施、自社の課題や職場改善までレポートにまとめてもらえるため便利です。もし、第三者機関をお探しの場合はエグジットインタビューいっとをご利用ください。
感情を押さえてヒアリングする
退職面談の担当者は、退職者が率直な意見を述べやすくし、退職理由を正確に把握するためにも感情を押さえてヒアリングしましょう。退職者は待遇や人事制度、上司や同僚との関係に何かしらの不満を抱き退職します。退職理由をヒアリングする上で「会社の悪口を言われて腹が立つ」と思うこともあるかもしれません。しかし、感情的になると相手から本音が聞けなくなります。そのため、感情を押さえてヒアリングに徹するようにしましょう。
退職者を引き止めない
退職面談では退職者を引き止めてはいけません。なぜなら、退職者は強い意志を持って退職を決断しているためです。退職を決断するまでの会社側からサポートが受けられなかったことが原因で退職します。それにも関わらず、退職面談で引き止めてしまうと「本当に自分の意見を尊重してくれない会社だ」と感情を逆撫でしてしまいかねません。そのため、退職面談では退職者を引き止めないようにしましょう。
退職者を出したくない場合は、退職の予兆を察知してサポートすることが大切です。どのような予兆があるか、下記の記事でご紹介しているため、ぜひ読んでみてください。
関連記事:『仕事を辞める人の前兆とは?従業員を引き止める方法まで解説!』
退職者の意見を尊重する
優秀な社員が退職する場合は引き止めたくなりますが、退職者の意思は第一に優先しましょう。その理由は無理に引き止めると会社の印象が悪くなるためです。
また、退職面談で企業の不満を聞かされたり、職場の人の悪口を聞かされたりするかもしれません。このような場合、不快な思いをするかもしれませんが感情的に受け止めず、全てを受け入れるように心がけましょう。退職面談の目的は情報収集と認識しておくことが大切です。
退職後も交流を深めたいと伝える
人事担当者が退職面談を行う場合は、退職後も交流を深めたいという意思表示をして人的ネットワークづくりに勤めましょう。人的ネットワークを構築しておけば、再雇用や業務委託先として新たなご縁が得られます。
◆ 退職面談を職場改善に反映する方法
退職面談を終えたら、人事担当者は職場改善に努めましょう。職場改善は4STEPで行います。
- 退職理由から職場改善案を立てる
- 職場改善案の優先順位を付ける
- 職場環境を改善する
- 改善施策の効果を測定する
ここでは、それぞれの手順について詳しく解説します。
退職理由から職場改善案を立てる
退職面談で退職を聞き出せたら、職場改善を考えていきます。
例えば「労働時間が長くてプライベートの時間が取れない」が退職理由の場合は、業務量の見直して適切なタスク配分をすると計画を立てていきます。
また「昇進のチャンスがなく、キャリアパスが見えない」が退職理由の場合は、キャリア開発支援や教育研修の充実を図ることが大切です。このように、退職理由から職場改善案を立てていきます。
職場改善案に優先順位を付ける
次に職場改善案に優先順位を付けます。
職場改善案は一度に全てを行うことはできません。そのため、緊急性や影響度を踏まえて、どの改善案から取り組むかを考えていきます。緊急性や影響度から優先順位をつける、実行しやすさの観点から、どれから取り組むかを考えると円滑に物事を進められるようになります。
職場環境を改善する
退職原因から職場環境の問題点を洗い出せたら、職場環境を改善していきます。職場環境を改善する方法にもよりますが、3通りの方法で改善できます。
■経営層主導型
経営者が事業場全体の対策を進める方法で、職場環境の改善の工数を減らしたい方におすすめの方法です。
■管理監督者主導型
管理監督者が主導して対策を進める方法で、部署別に職場環境の改善をしたい方におすすめの方法です。
■従業員参加型
従業員参加型で対策を進める方法で、みんなで職場環境を改善したい方におすすめの方法です。
改善施策の効果を測定する
職場環境の改善をしたら効果の測定をしましょう。その理由は、改善施策で本当に離職率が下がったのか判断するためです。離職率が下がっていない場合は、他の問題が離職に繋がっていると考えられます。これらは、効果測定しないと分からないため必ず検証しましょう。
まとめ
今回は人事担当者が行いたい退職面談について解説しました。退職面談には、職場環境の改善をするためやアルムナイ採用(出戻り雇用)するために行います。この記事では、退職面談のやり方をご紹介しましたので、ぜひ、この記事を参考にしながら取り組んでみてください。
人事担当者の退職面談で、退職希望者のホンネを聞き出せるか分からないと悩んでいる方は、エグジットインタビューいっとを利用してみてください。お客様の代わりに退職希望者から退職理由をヒアリング、職場課題の改善方法を提案させていただきます。