「育休復帰後の人間関係の変化にストレス…」「産休明けに先輩が指導してくれたけれど、残業続きで大変…」などの理由で、育休復帰後にすぐに退職してしまう人がいます。中には、育休明け1ヵ月で退職する人もいて周囲の波紋を呼ぶケースもあります。このような問題を防ぐには、どうすれば良いのでしょうか?
そこで、今回は育児復帰後の退職を防ぐ方法について解説します。育児復帰後の退職は想像以上に多いため、企業側は何ができるかを把握して離職対策しておきましょう。
目次
[体験談]育休復帰後1か月で退職した従業員
A子さんの職場では、人手不足が解消されない過酷な環境でしたが、育児休暇を取得しました。
A子さんは育休復帰後に業務過多となることを見据えて、実家の近くに住むことにしました。このような準備までしていたにも関わらず、育休復帰後に仕事内容が変わり、車で通わなければいけない現場に異動させられてしまったのです。
育児休暇制度はありますが、しわ寄せを受け入れない社風で、嫌がらせも受けました。有給休暇を取得できなかったため、育児と仕事の両立が難しいと退職してしまったのです。
育休復帰後に退職する人の割合は30%
育休復帰後に退職する人の割合は想像以上に多いです。国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、出産退職は30.5%です。
出典元:第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)
つまり、育児休暇制度を利用した3人に1人が退職していることになります。
育休復帰後に退職する理由
従業員が育休復帰後に退職する理由は5つあります。
育児が想像以上に大変であった
子育てを経験してみて「育児が想像以上に大変だ」と感じるママ・パパは多いです。生後間もない頃は夜泣きなどがあり、生活リズムが崩れて体力と精神力が消耗してしまいます。このような理由で、仕事と育児の両立が難しいと感じてしまうのです。
また、育休復帰できるように保育園に子供を預ける予定が、落選により計画が狂ってしまうこともあります。育児の現実が厳しく、仕事と育児の両立ができないと感じて退職してしまう方が多いです。
育休復帰後に仕事内容が変わっていた
育休期間中に組織再編が行われて、仕事内容が大きく変わっていることもあります。そのため、育児復帰後にスキルギャップを感じてしまうのです。
企業側が配慮して、育児復帰後に新たな業務指導をしても「新しい業務を覚えることが負担」「業務指導で残業が続き、仕事と育児の両立ができない」と退職してしまう方も出てきます。
子供の体調や都合で働くことができない
子供の体調不良で仕事の予定を急遽変更しなければならなくなる場合もあります。子供が発熱した場合は病院に連れていかなければならず、欠勤または遅刻など、仕事に支障が出てしまいます。
頻繁に欠勤や早退をすると「周囲に迷惑をかけてしまっているのではないか?」「仕事の評価が下がるのではないだろうか」と悩み、誰にも相談できずにストレスを感じて退職してしまいます。
ハラスメントを受けた
育児休暇のしわ寄せを受け入れない職場では、ハラスメントが発生しがちです。
例えば、育児と仕事の両立の難しさに悩み不安を打ち明けた際に「あなたの仕事を巻き取っているのよ」と同僚から無視されたり、「育児と仕事の両立は大変みたいだから」と重要なプロジェクトから外されたりします。
このような育児ハラスメントを受けて、精神的に苦痛を感じて退職してしまう人も多いです。
キャリアアップが見込めない
育休復帰後にキャリアアップが見込めなくなることがあります。例えば、以前は重要なプロジェクトを任せてもらえていたのに、担当から外されてルーティンワークばかり任されることもあります。
また、業務を巻き取っていた後輩が昇進・昇給していて、自分には同じような機会が与えられないなどの問題が発生するケースも多いです。このような職場で働くと「将来的にどのようなキャリアを築けばよいのだろう?」と不安になり、ストレスが蓄積されて退職に至ってしまいます。
育休復帰後の退職を防ぐ方法
育児復帰後に退職する理由をご紹介しましたが、工夫次第で離職防止できます。ここでは、育休復帰後の退職を防ぐ方法を8つご紹介します。
育児休暇中に連絡を取り合う
育児休暇中の従業員に定期的に連絡を取り合うようにしましょう。会社側からは、育児休暇中におきた職場の変化を伝えてあげると、スムーズに復職してもらえるようになります。
また、従業員側の状況や復職後の懸念点を聞いて、職場環境を整えてあげることも大切です。定期的に連絡を取り合うことで、お互いの状況がわかるようになり、育児復帰後に「職場が変わっていた」「働き方が変わっていた」を理由とした早期離職を防げるようになります。
育児への理解と配慮を示した職場環境づくり
育児休暇制度を作るだけでなく、育児への理解と配慮を示した職場環境づくりが大切です。
最初に行うべきことは、管理職向けの研修です。管理職が育児と仕事の両立する人を理解することで、どのように業務指示を出せばよいか理解できるようになります。
また、周囲が不満を持たないように、育児体験させて育児の大変さを知ってもらうことも大切です。社内の人が両立の大変さを理解を示すことで、協力し合いながら仕事が行えるようになります。
仕事と育児の両立をしている社員がいる場合は、ロールモデルにすることで「両立することができる職場だ」と安心感を抱いてもらえることです。
しかし、社内にロールモデルとなる人物がいない場合もあります。ロールモデルがいない場合の対策方法は下記の記事でご紹介しているため、併せてお読みください。
関連記事:「ロールモデルがいないと退職につながる!取り組める対策方法を紹介」
看護休暇制度を導入する
子供が熱を出したり怪我をしたりして急に休まなければいけないときに、柔軟に対応できるように看護休暇制度を導入しましょう。
看護休暇制度とは、就学前の子供が病気や怪我をして看護しなければならないときに、従業員が利用できる休暇制度です。
子供が1人であれば5日/年、2人であれば10日/年までの休暇が取得できます。看護休暇は有給休暇とは別に取得できる休暇です。
看護休暇制度を導入しておけば「子供が風邪を引いてしまい病院に連れていかなければならない」「仕事に支障が出てしまう」などの不安を払拭できます。
時差出勤制度を導入する
ママ・パパは子供の保育園、幼稚園の送迎などしなければなりません。仕事と育児の両立が負担にならないように、時差出勤制度を導入してあげましょう。
時差出勤とは、決められた範囲内で出勤・退勤の時間を選べる働き方をいいます。「8時〜17時」「9時〜18時」「10時〜19時」と複数のパターンから選べるようにすれば、子供の送迎など都合に合わせて働けるようになります。
リモートワークを導入する
仕事と育児の両立は想像以上に負担となるものです。そのため、リモートワークを導入して、仕事と育児の両立の負担を軽減させてあげましょう。
リモートワークを導入すれば、オフィスに通勤せずに済みます。また、通勤時間を育児や家事に充てることができます。また、子供を見守りながら働くことも可能です。
短時間勤務制度を導入する
仕事と育児の両立を推奨したい場合は、短時間勤務制度を導入しましょう。
短時間勤務制度とは、仕事と育児(または介護)の両立を目指して1日の勤務時間を短くする働き方をいいます。短時間勤務制度を導入する場合は、短時間勤務労働者でもキャリアアップの機会が得られるような制度設計を作っておきましょう。
フレックスタイム制を導入する
フレックスタイム制を導入すると、仕事と育児の両立がしやすくなります。
フレックスタイム制とは、総労働時間が定められており、範囲内で始業時間や終業時間を自由に決められる制度です。
例えば、1ヵ月の総労働時間が160時間と定められている場合、1日10時間働いたり、5時間で切り上げたりできます。つまり、子どもの体調不良や都合に合わせて、柔軟にスケジュールが立てやすくなります。
福利厚生サービスを充実する
育休明けの人が働けるように、福利厚生サービスを充実させましょう。
例えば、従業員が利用できる保育施設の紹介や保育料の補助などを出してあげると、仕事に集中してもらえるようになります。
また、仕事と育児の両立は想像以上に大変でストレスに感じることも多々あります。そのため、メンタルヘルスサポートをしてあげましょう。
育休復帰後の退職に関してよくある質問
最後に育休復帰後の退職に関してよくある質問をご紹介します。
Q.育休復帰後の退職は法的に問題ないのですか?
育児休暇制度は職場に復帰することが大前提の制度ですが、育休復帰後にすぐに退職することは法定に問題ありません。
職場の復帰を考えていたものの、想像以上に子育てが大変だったり、子供との時間を最優先したいなど価値観が変わることもあるでしょう。育休復帰後の選択肢は、個人の自由のため、法的に訴えることはできません。
Q.退職者に教えてあげるべきことは何かありますか?
育休復帰後に退職の意志表示をしてきた人には、次のようなことを教えてあげるとよいでしょう。
- 有給休暇を消化してもらう
- 退職後は失業保険を受給できる(※条件あり)
- 保育園を退園しなければならない恐れがある
- 再就職のハードルが高くなる
Q.優秀な人材が退職する場合のよい対応方法はありますか?
優秀な人材が育児を理由に退職してしまうことがあります。その場合は、アルムナイ採用を行っており、いつでも復職できることを伝えてあげましょう。
アルムナイ採用とは、退職者を再雇用することです。退職者と良好な関係を築き、いつでも復職できる状態にしておけば、人材確保ができます。
アルムナイ採用の取り組み方については下記の記事でご紹介しているため、ぜひお読みください。
関連記事:「アルムナイ採用とは?フロー・ステップから成功事例まで徹底解説!」
まとめ
「育休復帰後の人間関係の変化にストレス…」「産休明けに先輩が指導してくれたけれど、残業続きで大変…」などの理由で、育休復帰後に退職してしまう人がいます。このような問題が発生する理由は、職場に問題があるケースが多いです。そのため、育休明けでも、従業員が仕事と育児の両立を目指せるようにしましょう。
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