育児休暇を取得した後に、職場に復帰をして意欲的に働きたいと思っても補助業務しか割り当てられないと悩む女性が多く見受けられます。このような現状を「マミートラック」と呼びます。
マミートラックの対策をしなければ、働くことに意欲的な女性のモチベーションを下げてしまいかねません。そのため、マミートラック対策をしましょう。
今回はマミートラックについて詳しく解説します。この記事を読めば、マミートラック対策方法まで理解できるようになります。働きやすい職場づくりを目指している方は、ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
目次
マミートラックとは
マミートラック(mommy track)とは、育児をしながら働きたい女性が昇進・昇格と無縁のキャリアコースに乗ってしまうことをいいます。
1988年にカタリストのフェリス・シュワルツが、育児と仕事を両立できる融通の利く働き方として「マミートラック」を提唱しました。
しかし、日本企業の中には、男女均等雇用や仕事と育児の両立支援が行えていないところもあります。そのような企業では育児中の女性は補助的な職種に割り充てられてしまい、理想のキャリア形成できなくなってしまうのです。積極的に働きたいと考えている女性は、キャリア形成が見込めない労働意欲を失い離職してしまうため、マミートラック対策が必要になります。
マミートラック対策を行うメリット
育児をしながら働きたい女性の支援をするために、マミートラック対策を行うと以下のようなメリットがあります。
・生産性が上がる
・優秀な人材を確保できる
・企業イメージが上がる
ここでは、各メリットについて詳しく解説します。
生産性が上がる
マミートラックに悩んでいる女性は、育児をしながら仕事で昇進したいと向上心を持っています。女性は育児と仕事を両立させるために限られた時間で効率的に仕事をこなす感覚を身に付けています。そのため、同じ時間でも他の従業員より業務を捌くことができるのです。
日興リサーチセンターの調査結果によると、女性管理職の企業のROA(総資産利益率)は6.9%となっています。他の企業より1.3%も高いため、意欲的な女性を働かせると生産性が上がるのです。
優秀な人材を確保できる
マミートラックに悩んでいる方は、「自分のキャリアを形成したい」「昇格や昇進されたい」などの悩みを抱えています。ビジネスパーソンとして活躍するために、自分のスキルを磨きたいと思っているのです。
働くことに意欲的な人は、失敗を恐れずに積極的に仕事をしていきます。そのため、成長スピードが早く優秀な人材になります。このような優秀な人材を確保するためにも、マミートラック対策をしましょう。
企業イメージがアップする
育児しながら働ける環境を整備して、女性活躍推進を行えば企業イメージがアップします。
働きやすい職場と認知されれば人材採用がしやすくなります。それだけでなく、女性の活躍推進に取り組んでいる企業は、均等推進企業表彰銘柄として株式市場での評価が高まるのです。
投資家から支持され、資金調達がしやすくなります。そのため、上場企業では女性活躍推進が行われているのです。
マミートラック対策を行うデメリット
マミートラック対策のデメリットは、周囲の理解が必要になることです。
例えば、子どもが体調を崩したときは休んで看病する女性が大半です。そのリカバリーを他の社員でしなければいけません。育児の経験をしていない社員が「育児を理由に休暇を取得できて羨ましい」「フォローしているのに、給料が上がるわけではない」と不満を持ってしまうかもしれません。人間関係が悪くなると、働きにくくなってしまいます。
そのため、育児と仕事の両立を目指す女性だけでなく、周囲の人も気持ち良く働ける職場づくりを意識しましょう。
マミートラック対策の流れ
正しい手順でマミートラック対策をしなければ、周囲から不満が出てしまいます。そのため、マミートラック対策の流れを覚えておきましょう。
[マミートラック対策の流れ]
1.従業員にアンケート調査を行う
2.必要な対策を実施する
3.新たな働き方を周知する
ここでは、各手順について解説します。
1.従業員にアンケート調査をする
まずは、従業員にアンケート調査をして、どのような働き方を実現したいかを聞きます。マミートラック問題の背景にあるのは、社員とのコミュニケーション不足と企業側の思い込みです。そのため、育児をしながら働いている女性社員の理想の働き方を聞き出します。
2.必要な対策を実施する
女性社員が積極的に働きたいと思っている場合は、必要な対策を打ちましょう。勤務体制や勤務時間を見直したり、希望のキャリアが形成できるような人事制度に直したりします。
全ての対策を行うのは、費用や労力がかかります。そのため、アンケート調査結果を参考にしながら、自社に必要な対策をしてください。
例えば、時短勤務で働きながらも昇進・昇格を目指したい女性がいる場合は、リモートワークの導入の優先度は低くなります。このように、自社に必要な対策、不要な対策を分けることが大切です。
3.新たな働き方を周知する
人事制度や働き方を見直し終えたら、全従業員に周知します。
新たな働き方を周知する場合は、人事部門ではなく経営者が役割を担いましょう。経営者が働きやすい職場を作り上げるために熱心に動けば「従業員を大切にしている会社だ」と指示されます。その結果、新たな働き方が周知されやすくなり、育児と仕事が両立できる職場が作れます。
マミートラック対策方法
マミートラックの悩みを抱えている企業は、以下のような取り組みをすると解消できます。
・助け合いの職場風土を作る
・人事制度を見直す
・リモートワークを導入する
・企業内託児所を設ける
・女性コミュニティを立ち上げる
ここでは、それぞれの対策方法について詳しく解説します。
助け合いの職場風土を作る
女性が育児支援制度を利用するためには周囲からの理解が必要です。とくに、男性の育児休暇の取得率は低いため、男性に理解してもらうことが大切です。
育児に関して理解がないと「あなたは家庭の事情で休んでて、私が迷惑している」と思ってしまう恐れがあります。このような問題が起きないように、育児に関して理解を深める場を設けて、助け合いの職場風土を作りましょう。
助け合いの職場風土を作るためには、経営者などリーダーが動くことで企業風土として醸成されていきます。
人事制度を見直す
人事制度を見直して多様な働き方を実現し、どのような働き方を選んでも正当に評価される制度をつくりましょう。働き方に関する制度には以下のようなものがあります。
リモートワークを導入する
リモートワークを導入すれば、自宅で子育てしながら仕事ができるようになります。近年、ライフワークのバランスが取りやすい働き方としてリモートワークが注目されてきました。
通勤時間や帰り支度に充てていた時間を子どもの保育園や小学校の送り迎えに充てることができます。待機児童問題などで保育園や幼稚園に入園できない場合でも、仕事を継続していくことが可能です。
企業内託児所を設ける
就業中に子供を預けられる社内託児所を設けると、育児と仕事の両立がしやすくなります。子育てをしながら働ける環境を提供するために、企業内託児所を設ける企業が増えてきています。
育児をしながら働きたいと思う女性が多くても、託児所不足で待機児童が増えて、働きたくても働けない方が増えました。このような問題を解決したい方におすすめの方法です。
女性コミュニティを立ち上げる
女性コミュニティを立ち上げれば、育児と仕事の両立をしている同士が悩み・相談し合えるようになります。育児と仕事の両立をしながらのキャリアアップなど、従業員同士で相談し合える場を提供すれば、1人で悩ませずに済みます。
また、女性コミュニティの中で、キャリアアップにつながるセミナーが開催されることも多いです。
マミートラック対策に取り組む企業事例
最後に働きやすい職場を実現するために、マミートラック対策に取り組んでいる企業事例をご紹介します。
資生堂
出典元:『資生堂 公式ホームページ』
株式会社資生堂は80%以上が女性社員の化粧品メーカーです。同社は女性のエンパワーメントがイノベーションを創出すると考えており、女性管理職の比率を46.2%から50%にすることを目指しています。
1990年代初めから、育児休業制度や時短勤務制度などを導入し、働く女性を支援してきました。近年の支援内容としては、事業所内保育所「カンガルーム」を開設して仕事しやすい環境を整えています。
また、資生堂は女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を開催するなど、仕事に意欲を持っている方に対して成長の場を提供しています。育児と仕事の両立を頑張る女性社員の支援を充実させているため、マミートラック対策の参考におすすめの企業です。
アサヒグループホールディングス
出典元:『アサヒグループホールディングス 公式ホームページ』
アサヒグループホールディングスでは、社員一人ひとりが輝くために、2021年3月に「ダイバーシティ&インクルージョンステートメント」を策定しました。職種や世代が異なるメンバーの意見を反映させて、働きやすい職場づくりに取り組んでいます。従業員から意見を収集して、職場改善をしていく担当者を社内公募で決めました。
同施策により、昇進・昇格要件や評価制度が見直し、育児や介護などのライフスタイルや価値観を尊重しながら働ける職場を実現しています。同社は経営層における女性比率が22%と他社よりも高いことでも知られています。
メルカリ
出典元:『メルカリ 公式ホームページ』
株式会社メルカリでは、どのような人にも平等なチャンスと適切なサポートをして、従業員が働きやすい職場環境を整備しています。
女性は結婚や出産、育児、介護などでライフスタイルが大きく変わりますが、自分らしく活躍できる環境や機会をつくるためのコミュニティ「Women@Mercari」を立ち上げています。
コミュニティでは、エンジニア育成プログラム「Build@Mercari」や、女性エンジニアのキャリア形成に関する悩み相談ができる「Women Who Code」が用意されており、育児と仕事の両立に悩む方を支えているのです。
まとめ
マミートラックは、育児をしながら仕事を頑張りたい女性の労働意欲を低下させてしまいます。仕事に意欲的な人が離職してしまうと、企業側も大きな損失を被ります。そのため、マミートラック対策をして育児と仕事の両立がしやすい職場をつくりましょう。
今回は、マミートラック対策に取り組んでいる企業事例をご紹介しました。企業事例を参考にしながら対策をしてみてください。
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