Exit interviewエグジットインタビュー

2022.8.19

約2割の企業が取り組み始める出戻り雇用!制度の整え方を解説!

退職して他社で働き始めた元社員を再雇用する企業が増えています。その理由は、労働者不足で求人を出しても優秀な人材が採用できないためです。

しかし、出戻り社員の待遇や役職について決めづらく、好待遇にすると既存社員から不満が持たれてしまう恐れがあります。このような失敗を防ぐために、どのような人事制度を設けるべきなのでしょうか?

今回は出戻り雇用について具体的に説明します。この記事を読めば、出戻り雇用を実施するための人事制度の整え方や実施方法が分かるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。

◆ 出戻り雇用とは


出戻り雇用とは、他の企業で働いたり独立したりするために退職した社員を再び雇用することをいいます。また、介護や育児など家庭の事情で退職した元社員を雇用することも、出戻り雇用に含まれています。定年退職後に再び雇用することは、出戻り雇用に含まれません。

出戻り雇用は、別名「アルムナイ採用」とも呼ばれています。

アルムナイ採用について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。

関連記事:『アルムナイ採用とは?フロー・ステップから成功事例まで徹底解説!

・ 出戻り雇用の実施企業の割合は65.9%

マイナビ「中途採用状況調査2020年版」によると、2019年度に出戻り雇用した会社の割合は65.9%。従業員300人以上の大企業では80%が出戻り雇用を実施しています。

厚生労働省の報告書「再雇用制度の状況」では、再雇用制度を設けている企業は16.7%。この結果から、再雇用制度を設けていないけれど、出戻り雇用した経験がある企業が多いことが分かります。

・ 企業が出戻り雇用した理由


マイナビ「中途採用状況調査2020年版」によると、企業が出戻り雇用した理由は以下の通りと述べられています。

Q.一度退職した人を再雇用した理由は何ですか?
第1位:社内の仕事内容に関する知識や理解があるから(35.0%)
第2位:過去に社内で実績があり、活躍が見込めるから(32.5%)
第3位:社内の人間関係や理念・社風に理解があるから(29.9%)
第4位:退職後の経験やスキルが自社に活かせると感じたから(21.8%)
第5位:人となりが把握できており選考の精度が高まるから(20.6%)

企業の風土や事業内容を熟知しており、他社でスキルを磨いた出戻り社員を雇用すれば、即戦力として働いてもらえます。自社の業務内容を知っているため、研修を行う必要もありません。

また、出戻り社員の人柄が理解できるため、スピーディーな採用が行えます。また、採用後のミスマッチも起きにくいことが出戻り雇用するメリットとなっています。

・ 企業の出戻り雇用の満足度


エン・ジャパン「企業の出戻り(再雇用)実態調査2018」によると、出戻り雇用に満足している企業は約8割という結果になりました。出戻り雇用に満足している理由として、以下のようなものが挙げられます。

・元々人徳のある方達だったため、復帰を歓迎された
・退職後も社員と連絡をよく取っていたようで馴染むのが早かった
・社内の仕組みがわかっていて、研修に掛ける時間が少なくなった
・在職時よりもマネージメントの面でスキルアップしていた

出戻り雇用に満足している理由として、社内の仕組みを理解していて教育に時間がかからないなどが多く見受けられました。

◆ 出戻り雇用が失敗してしまう原因


約8割の企業が出戻り雇用を実施していますが、実施企業の約2割が失敗しています。出戻り雇用で失敗してしまう原因とは何なのでしょうか?失敗を防止するためにも、失敗原因について理解を深めておきましょう。

・ 既存社員と出戻り社員の関係が悪くなる

出戻り社員を知る元同僚や元部下などは、抵抗なく迎え入れてくれるでしょう。しかし、出戻り社員と関わったことがない既存社員からすれば「入社早々、生意気な感じがする」と思う人が出てきて、社内の雰囲気が悪くなる恐れがあります。

業務経験があるため仕事にスムーズには入れるが、ブランク期間に入社した従業員との関係が良くないなどの悩みが発生しがちです。そのため、出戻り社員を雇用する前に社内イベントを実施して、どのような人物であるかを既存社員に理解してもらいましょう。

・ 現在のルールに沿って働いてもらえない

出戻り社員を雇用すると、現在のルールに沿って働いてもらえないこともあります。その理由は「以前は、このような方法で業務が進められていた」と独断で判断して、業務を進めてしまう恐れがあるためです。

経営陣の強い推薦で採用したけれど、現在のルールに馴染もうとしてもらえず、上手く連携が取れないなどの悩みが発生しがちです。そのため、現在のルールに沿って働いてもらうように促しましょう。

・ 出戻り社員の報酬や役職を決めるのが難しい

出戻り社員の報酬や役職を決めるのは、想像以上に難しいです。その理由は、過去に努めていた頃の実績を評価してしまうと、既存社員から不公平だと不満が出る恐れがあるためです。

既存社員が不満を抱くようになると、仕事に対するモチベーションが低下して生産性が落ちます。そのため、出戻り雇用の基準を明確に設けておきましょう。出戻り雇用の基準を決めるのは難しく感じますが、大手企業の出戻り雇用制度などを参考にすると決めやすいです。

◆ 出戻り雇用を成功させるポイント


正しい方法で出戻り雇用すれば、失敗せずに済むため手順を覚えておきましょう。

 1.再雇用制度を構築する
2.柔軟な働き方を用意する
3.再雇用制度を周知させる
4.退職希望者と円満退職をする
5.アルムナイネットワークを構築する
6.アルムナイ採用のサイトを運営する

ここでは、出戻り雇用を成功させるための手順を具体的に説明します。

・ 再雇用制度を構築する

出戻り雇用に失敗しないために再雇用制度を構築しましょう。再雇用制度では、出戻りまでの年数制限、必須スキル、経験、採用基準を明確にします。

出戻り社員の報酬を決める場合は、既存社員と同じに揃えるべきです。しかし、過去の貢献度を顧みて高めに設定する場合は、配属先へ貢献を周知させておきます。このような制度を明確に定めることで、社員からの不満が出にくくなります。

・ 柔軟な働き方を用意する

テレワークの導入やフレックスタイムの導入など、柔軟な働き方を用意すれば出戻り雇用がしやすくなります。その理由は、柔軟な働き方を用意すれば、ライフスタイルや趣向に合わせて働けるためです。

例えば、育児や介護などの家庭の事情で退職した従業員の中には、テレワークであれば働ける人もいるはずです。このように、出戻り社員を雇用するために柔軟な働き方を用意しましょう。

・ 再雇用制度を周知させる

再雇用制度を構築したら、従業員全員に周知させましょう。再雇用制度を構築した後に説明したり、入社の手続き時に説明したりしてください。また、就業規則に再雇用制度について記載しておきましょう。

再雇用制度を周知させれば、出戻り社員を希望する人を採用できるだけでなく、既存社員からの理解が得やすくなります。

・ 退職希望者と円満退職をする

出戻り雇用を成功させるためには、退職者との良好な関係が欠かせません。そのため、社員が退職する場合は心から応援をしてあげてください。相手の成長を応援すれば、成長した後に、一緒に働けることもあるでしょう。

また、転職先が新規の取引先になる場合もあります。そのため、社員が退職しても良好な関係を築けるように配慮しましょう。

・ アルムナイネットワークを構築する

出戻り雇用を見据えて、アルムナイネットワークを構築しましょう。アルムナイネットワークとは、退職者との繋がりを意味します。退職者との繋がりを確保する方法には、以下のようなものがあります。

【アルムナイネットワークの構築方法】
・元社員とSNSで繋がる
・元社員も参加できる社内イベントを実施する
・元社員に社内報を送付する
・人事担当者が元社員と良好な関係を維持する

・ アルムナイ採用のサイトを運営する

出戻り雇用をしたい場合は、アルムナイ採用のサイトを運営しましょう。アルムナイ採用のサイトを運営しておけば、「現在、どのような職種の応募をしているのか?」と元従業員が気軽に求人を閲覧できるようになります。

アルムナイ採用のサイト経由で応募してもらい採用できたら、採用コストがかかりません。そのため、出戻り社員向けのアルムナイ採用のサイトを運営するようにしましょう。

◆ 出戻り雇用を実施している企業事例


出戻り雇用をする場合の手順をご紹介しましたが、実施している企業では、どのような制度が設けられているのでしょうか?出戻り雇用を成功させるために、実施企業の制度内容を見ておきましょう。

・ トヨタ自動車

トヨタ自動車では「プロキャリア・カムバック制度」が設けられています。

プロキャリア・カムバック制度は、配偶者の転勤など家庭の事情で退職する従業員のうち、事務職・技術職・業務職における準指導職以上の社員の職場への復帰を支援する制度です。本人の志願したい時期に再雇用申請ができます。

このキャリア・カムバック制度には、明確な再雇用の基準が設けられており、従業員を困惑させない工夫がされています。

・ コクヨ

コクヨでは、自己都合退職者再雇用制度が設けられています。この制度は「結婚・出産・育児・介護・転勤・留学・転職などで自己退職した正社員を再雇用するものです。

再雇用を促進するために、コアタイム設定のないフレックスタイム制度やフリーアドレス制度などを導入しています。このような再雇用制度を設けた背景には、元社員が外で得た能力や経験をフル活用していきたいという狙いがあります。

・ 明治乳業

明治乳業は、2020年4月からリ・メイジ制度が設けられました。リ・メイジ制度は、正規社員として3年以上勤務した後に退職した者を再雇用するという制度です。

以前から、明治乳業では再雇用制度が設けられていましたが、どのような社員を再雇用するか明確な基準を設けて新制度の導入に踏み切りました。

◆ まとめ

今回は出戻り雇用について解説しました。出戻り雇用したことがある企業は約6割で、約8割が満足していると回答しています。その理由は、企業を知り尽くした元従業員を採用すれば即戦力として働いてもらえるためです。

しかし、出戻り雇用をすると、職場の人間関係が悪くなったり、不平等な人事制度に不満を抱いたりします。

この記事では、出戻り社員の正しい取り組み方をご紹介しました。この記事を参考にしながら、取り組めば出戻り雇用で失敗しないでしょう。ぜひ、これを機会に出戻り雇用を検討してみてください。

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