「新入社員は早期離職すると聞くけれど、どれぐらいの人が離職しているのだろうか…」「自社の新卒離職率は高いのだろうか…」と気になっていませんか?
そのような方向けに、今回は新卒離職率について解説します。この記事では、新卒離職率の計算式や平均値、離職理由をご紹介します。そのため、自社の新卒離職率が高いかどうか判断する際に、ぜひお役立てください。
目次
新卒離職率とは
新卒離職率とは、入社後一定期間における新入社員の離職率を表す数値です。入社後3年以内の離職を「早期離職」と呼びます。
厚生労働省の報道向けレポートでは、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者37.0%、新規大卒就職者32.3%と発表されており、3人に1人が早期離職をしている状況です。
出典元:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
新卒離職率が高いと採用・教育のコストが無駄となり、既存社員の負担増大などいろいろ悪影響が出ます。
新卒離職率の計算式
新卒離職率は、次の計算式で求められます。
「○年度に入社して3年以内に離職した新入社員数 」÷「○年度の新入社員数 」× 100(%)
例えば、2021年度の新入社員数が100名で3年以内の離職者が25名の場合は、25÷100×100で新卒離職率は25%となります。
学歴・事業規模・業界別の新卒離職率
自社の新卒離職率が高いかを調べたい場合は、平均離職率と比較してみましょう。ここでは、学歴・事業規模・業界別の新卒離職率(平均値)をご紹介します。
出典元:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
学歴別
学歴別の新卒離職率は以下の通りです。学歴に関係なく、新入社員の3人に1人は離職しています。
学歴 | 平均離職率 |
中学 | 52.9% |
高校 | 37.0% |
短大 | 42.6% |
大学 | 32.3% |
事業規模別
事業規模が大きいほど新卒離職率が低い傾向があります。
事業所規模 | 平均離職率 |
5人未満 | 57.4% |
5~29人 | 50.45% |
30~99人 | 42.1% |
100~499人 | 34.8% |
500~999人 | 31.25% |
1,000人以上 | 26.35% |
業界別
業界毎に新卒離職率は大きく違います。
業界別 | 平均離職率 |
建設業 | 30% |
製造業 | 27% |
情報通信業 | 32% |
運輸業 | 25% |
卸売業 | 27% |
小売業 | 38% |
金融業 | 24% |
不動産業 | 32% |
宿泊業 | 62% |
教育、学習支援業 | 48% |
医療、福祉事業 | 45% |
サービス業 | 57% |
他社の新卒離職率を調べる方法
競合他社の新卒離職率を調べたい場合は、学生向けの就職情報サイト「マイナビ2025」がおすすめです。マイナビ2025には、過去3年間の新卒採用者数と過去3年間の新卒離職者数が記載されています。これらのデータを活用すれば、競合他社の新卒離職率が簡単に調べられます。
新卒離職率の高さが企業に与える影響
新卒離職率が高いと、企業にさまざまな悪影響を及ぼすため注意してください。ここでは、新卒離職率の高さが企業に与える影響をご紹介します。
採用コストが無駄になる
新入社員が3年以内に離職すると、採用コストが無駄になります。就職みらい研究所「就職白書」では、新卒を採用する場合の1人当たりの採用コストは93.6万円と発表されています。
新卒採用を成功させるために、学生向けの就職情報サイトを利用したり、PR動画を制作したりしなければなりません。また、学生向けに会社説明会を実施します。新卒採用を成功させるために努力をしたにも関わらず、早期離職されるとコストが無駄になります。
出典元:就職みらい研究所「就職白書2020 ~冊子版 PDF~」
企業のイメージが低下する
新卒離職率の高さは隠すことができません。学生向けの就職情報サイトには離職率を記載する箇所があります。離職率の記載の義務はありません。しかし、退職者が会社の悪口をSNSや評判サイトにて情報発信できる時代となりました。そのため、新卒離職率が高いと必然的に企業のイメージが低下してしまいます。
離職率が高い企業に対して、不信感を持つ人も少なくありません。優秀な人材が採用できなくなるなど、不利な状況に陥ってしまいます。
既存社員に負担がかかる
新卒離職率が高いと、組織運用が計画通りに行えなくなります。新入社員が担当する業務を既存社員が受け持つことになり、業務過多となります。業務過多になると、仕事でミスが増えたり、人間関係がギスギスしたりとするため注意してください。ストレスで体調不調に陥り、最悪の場合は退職してしまうかもしれません。
業務過多の恐ろしさについて知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『業務過多で従業員が退職!人間関係や労働環境の悪化を解消する方法とは』
新入社員の退職理由
新入社員が退職する理由はさまざまですが、リクルートマネジメントソリューションズの統計調査によると、以下の理由による退職が多いようです。
- 労働環境・条件がよくない(25.0%)
- 給与水準に満足できない(18.4%)
- 職場の人間関係がよくない、合わない(14.5%)
- 希望する働き方ができない(14.5%)
引用:リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
労働環境・条件がよくない
新入社員の退職理由で最も多いのは「労働環境・条件がよくない」です。
一般的に、入社したばかりの新入社員は研修を受けたり、先輩の業務をサポートしたりすることが多いため残業はありません。
しかし、入社半年後に仕事に任され始めると残業が増えます。入社当初は残業がなかったにも関わらず、突然残業が増えて「労働環境が悪い」と感じてしまいます。
Z世代は、仕事とプライベートの両立して働ける職場が理想と考える傾向にあるため、新入社員に長く働いてもらいたい場合は労働環境を見直すようにしましょう。
給与水準に満足できない
新入社員の中には給与をモチベーションにしている方も多いです。
新入社員が給与水準に満足できなくなる瞬間は、入社前に期待していた月額給与と手取り給与に大きな差があったときです。また、同世代の友人から給与を聞き、低いと感じると不満に感じます。
会社に貢献できない新入社員が高収入を得るのは難しいですが、ロールモデルとなる人の収入を提示してあげるなどして、努力すれば給与は上がることを教えてあげることが大切です。
職場の人間関係がよくない、合わない
新入社員の仕事のパフォーマンスは、人間関係で変わります。上司や先輩と良好な関係を築けないと、新入社員は孤独感を感じます。
上司や先輩がサポートしてくれず「どの業務をするべきだろうか?」「上司や先輩に業務の相談をしたいけれど忙しそう」と悩み、ストレスを感じることもあるでしょう。上司や先輩に相談ができず、仕事がしにくいと感じたら、新入社員は退職してしまいます。
希望する働き方ができない
Z世代はキャリアパスを描いている方が多いです。そのため、入社前に説明された仕事内容と実際の仕事内容が異なる場合、仕事にやりがいを感じられなくなります。希望するキャリアパスを提示してもらえないと「この会社で働き続けてよいのだろうか?」と悩み、不満が蓄積されて退職しています。
新卒離職率を下げるための対策方法
新卒社員の離職を防ぎ、定着率を高めるには、企業として継続的な取り組みが必要です。ここでは新卒離職率を下げるための対策方法をご紹介します。
採用ミスマッチを防ぐ
新入社員の早期離職は、採用ミスマッチで起きます。採用ミスマッチが起きる原因は5つあります。
- 採用基準を明確に定めていなかった
- スキル確認を怠ってしまった
- 求職者の人柄を見抜けなかった
- 求人広告に良い部分しか掲載しなかった
- フォロー体制が整備できてなかった
これらに注意すれば、採用ミスマッチを防げます。
採用ミスマッチを防ぐ方法を詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『採用ミスマッチ5つの原因と8つの対策方法!発生時の対処法まで解説』
労働環境を見直す
新卒社員の早期離職を防ぎたい場合は、職場の問題を把握して改善していきましょう。職場環境を構成する要因は4つあります。どこに問題があるかを特定して改善していきましょう。
職場環境の見直し方について詳しく知りたい方は、下記を読んでみてください。
関連記事:『職場環境の改善方法を手順に沿って解説!問題が起きる原因まで紹介』
オンボーディングを実施する
新入社員が入社して早期に1人立ちできるように、オンボーディングを実施しましょう。オンボーディングを通じて、組織の一員としての自覚を促し、所属感を高めることができます。
また、オンボーディングを行うことで、孤独感を解消し安心して仕事に取り組めるようにもなります。オンボーディングは、新卒社員がスムーズに企業に馴染み、活躍できるための重要なプロセスです。そのため、オンボーディングを実施するようにしましょう。
メンター制度を導入する
新卒社員に仕事の進め方について相談できるようにメンターを付けましょう。
新卒社員は、職場も含め生活環境が大きく変わり、不安を感じやすくなります。このような不安を払拭するために、年齢が近い先輩をメンターにつけてあげましょう。メンターである先輩に相談することで不満を解消し、離職を防止できます。
社内に年齢が近いメンターがいない場合は、社外メンターを利用しましょう。社外メンターについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『社外メンターとは?メリットや活用事例、選定方法まで解説』
人事評価制度を見直す
新入社員に意欲的に働いてもらえるように、人事評価制度を見直しましょう。人事評価が不公平だと不満を持たれないためには、以下に気をつける必要があります。
- 人事評価の基準を明確にする
- 人事評価と報酬を連動させる
- 360度評価を導入して管理職を決める
- 管理職研修を実施する
- 人事評価について丁寧にフィードバックする
人事評価の見直し方について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『人事評価が不公平になる5つの理由!人事評価の見直し方法まで解説』
1on1を実施する
ほとんどの離職者は、突然会社を辞めてしまうわけではありません。新卒社員も同じで、最初は会社に何か不満などがある状態です。その時の新卒社員の言動などからサインをキャッチすることで離職を防止できます。
そのためには、日頃からコミュニケーションの取りやすい職場を作り、定期的に面談するなどして、何でも話してもらえる環境を作る必要があります。
1on1面談のやり方について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『1on1ミーティングの目的とは?キャリア支援につながる正しい手順を紹介』
まとめ
新卒離職率とは、入社後一定期間における新入社員の離職率を表す数値です。入社後3年以内の離職を「早期離職」と呼びます。学歴・事業規模・業界別の新卒離職率をご紹介しましたが、大体3人に1人が3年以内に離職しています。
新入社員の離職は、企業に悪影響を及ぼします。そのため、新卒が早期離職する理由を把握して職場改善をするようにしましょう。
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