「企業の生産性を上げたい場合は、心理的安全性を高めることが効果的だ」とGoogle社が発表しました。この発表により、多くの企業が心理的安全性に注目するようになりましたが、どのようなものなのでしょうか?どのように職場の心理的安全性を作るのでしょうか?
今回は職場の心理的安全性の作り方をご紹介します。この記事を読めば、心理的安全性を損なう因子から対策方法まで分かるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
◆[はじめに]心理的安全性とは
心理的安全性とは、チームの中で自分の意見や気持ちを誰にでも見せられる状態をいいます。1999年に組織行動学を研究していたエドモンソンが提唱した心理学用語です。
2015年にGoogleが「チームの生産性で最も重要な因子は心理的安全性である」と発表して大きくの企業に注目されるようになりました。
◆心理的安全性を損ねる4つ因子
心理的安全性は4つの因子によって損なわれます。どのような原因で心理的安全性が下がるかを把握しておきましょう。
・無知だと思われる不安
無知だと思われることを恐れると、周囲に気軽に相談できなくなります。なぜなら「このような質問をしたら無知だと思われるのではないか?」「このような相談をしたら、無知だと思われるのではないか?」と思うためです。
その結果、周囲に相談することなく自己流で仕事を進めていきます。チーム間の相談が減ると認識ズレが生じてトラブルを招く恐れがあります。
・無能だと思われる不安
無能だと思われることを恐れると、自分の失敗を認められずミスの報告がしにくくなります。なぜなら「誰でもできる仕事でミスをするなんて無能だと思われないか?」と思うためです。仕事のミスの報告が遅れてしまうと、取り返しの効かない事態となります。
・邪魔だと思われる不安
邪魔だと思われることを恐れると、自発的な発言ができなくなります。なぜなら「周囲は忙しいから、話をかけると邪魔だと思われるのではないか?」と思うためです。
さまざまな価値観の従業員の意見を出し合えば、イノベーションなど相乗効果が狙えることがあります。しかし、邪魔だと思われる不安を抱えている限り、自発的な発言は期待できなくなります。
・悪い印象を与える不安
周囲に悪い印象を与えてしまうのではないかと不安を抱くと、プロジェクトの懸念点やリスクが発言できなくなります。なぜなら「他人の意見に反論すると悪者扱いされるのではないか?」「相手から嫌われてしまうのではないか?」と思うためです。
この結果、リスクに関して発言しなくなり、救難な議論がされないまま意思決定してしまいます。
◆心理的安全性を測定する7つの質問
心理的安全性を損ねる4つの因子をご紹介しましたが、自社はどの程度なのか測定する際には、エイミー・エドモンドソン提唱「7つの質問」をしてみましょう。
※「1」「3」「5」はスコアが低いほど、心理的安全性が高い
※「2」「4」「6」「7」はスコアが高いほど、心理的安全性が高い
◆心理的安全性の作り方
心理的安全性が低い場合は、どのように解決すれば良いのでしょうか?次に心理的安全性の作り方をご紹介します。
・上司が部下に声をかける
相談・報告しやすい環境作りは、上司の対応が鍵を握ります。上司が率先して部下とコミュニケーションを取ることで職場の雰囲気が和らぎ、相談しやすい環境を作れます。
上司は部下がミスをしたら指摘しなければいけません。このような場合はミスを指摘した後に、解決策や再発防止策を一緒に考えてあげることにしましょう。上司が部下に安心感を与えることができれば、相談・報告されやすくなります。
・部下の強み・弱みを把握する
仕事を進めていくと壁にぶち当たることもあります。仕事の壁を感じた部下は、無能なのではないかと自信喪失に陥ってしまいます。このような場合、上司は部下に強みと弱みを教えてあげましょう。大切なことは部下の強みを伝えて自信を伝えてあげることです。
そして、仕事の壁の乗り越え方を一緒に考えてあげましょう。このように、部下に自信を付けさせたりフォローしたりすることで、上司に対する信頼を醸成できます。ミスの報告が遅れてしまうのは、上司に対する信頼が薄いことが主な原因です。そのため、上司は部下の強みと弱みを把握してフォローするようにしましょう。
・成功体験を積ませて自信を付けさせる
部下が努力したら達成できる目標を定めて成功体験を積ませてあげると、自信を付けさせられます。
不安を抱きやすい人やマイナス思考で物事を考えがちな人は、成功体験が少ないことが多いです。成功体験が少なくて失敗が続くと誰でも自信を失くしてしまい、自発的な意見を言わなくなってしまいます。
したがって、自信がなく自発的な意見が少ない従業員がいたら、1on1面談で努力すれば達成できる目標を定めて成功体験を積ませてあげましょう。
・平等に発言する機会を与える
会議などでは、各メンバーの意見を聞くようにしましょう。理想の会議は、各メンバーが自発的に意見を言い合える会議ですが大抵は上手くいきません。その理由は、メンバーの中には、発言したくても勇気が持てないという人もいるためです。したがって、司会者が各メンバーに質問するなどして平等に発言する機会を与える方法がおすすめです。
意見を出してくれた相手には、感謝の言葉を伝えるなど工夫すれば、自発的に発言してもらえるようになります。
・感謝の気持ちを伝える
仕事を手伝ってもらったり、アドバイスをもらったりしたときに感謝の気持ちを伝えると、相手の存在を認めることができます。組織メンバーから感謝の気持ちを伝えられると「とても働き甲斐のある職場」と思えるようになります。その結果、組織全体の雰囲気を良くしていけるのです。
◆心理的安全性の作り方が上手な企業事例
心理的安全性の作り方をご紹介しましたが、上手くいっている企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか?ここでは、心理的安全性の作り方が上手な企業事例をご紹介します。
・カルビー株式会社
出典元:『カルビー株式会社』
カルビー株式会社は、日本のスナック菓子メーカーです。同社は「全員活躍」というビジョンを掲げており、メンバー1人1人が能力を発揮し成長し続けられるように管理職が導いています。
2019年に同社は1on1を導入しました。1on1導入の目的は「上司と部下のコミュニケーションを解消」「チームメンバーのケア」「心理的安全性の確保」です。1on1では、上司が一方的に話すのではなく、メンバーに気づきを与える効果的な質問をして成長を支援して、従業員エンゲージメント向上に成功しています。
同社が1on1で心理的安全性を作れている理由は、面談を実施する上司にマネジメント研修(傾聴・共感・コーチング)を受講させたからです。部下をマネジメントする方法を学んだ上司が適切な方法で1on1を実施しているため、心理的安全性作りに成功しています。
・株式会社メルカリ
出典元:『株式会社メルカリ』
株式会社メルカリは、フリマアプリ「メルカリ」を運営している会社です。同社は「仕事をしなければならない」という状況を「仕事をしたい」という状況にしようと試みています。従業員のエンゲージを上げることをミッションにしている同社では、ピアボーナス制度が導入されています。
ピアボーナスとは、従業員同士がお互いの仕事ぶりに対してインセンティブ(メルチップ)を送る制度をいいます。「仕事を手伝ってくれてありがとう」「あなたの仕事ぶりを尊敬しているよ」という意味合いでメルチップを送り合うことで、信頼関係の醸成、モチベーション向上を促しているのです。
出典元:『Google』
Googleはインターネット関連サービスを提供しているIT企業です。Googleでは心理的安全性を作るために以下の取り組みがされています。
- 1on1…上司と部下の信頼関係を作る
- OKR…目標達成で自信を付けさせる
- ピアボーナス…感謝の気持ちを伝え合い信頼関係を作る
Googleが取り組んだことで、多くの企業が心理的安全性に注目し始めました。そのため、Googleの取り組みは覚えておくと良いでしょう。
◆まとめ
心理的安全性とは、チームの中で自分の意見や気持ちを誰にでも見せられる状態をいいます。2015年にGoogleが「チームの生産性で最も重要な因子は心理的安全性である」と発表して大きくの企業に注目されるようになりました。
心理的安全性が低い職場で働く従業員は「無知だと思われないか?」「無能だと思われないか?」などの不安を抱えています。このような不安を払拭することで、従業員が積極的に意見を言ったり、能動的に行動できるようになったりするのです。
この記事では、心理的安全性の作り方をご紹介しました。この記事を参考にしながら心理的安全性を高めてみてください。
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