「新たな人材を採用したけれど、半年も経過せずに退社してしまう」など早期離職に悩んでいませんか?従業員が早期離職をしてしまうと、採用や教育にかけた費用が無駄になってしまいます。
このような従業員の早期離職が起きる主な原因として「採用ミスマッチ」があります。採用ミスマッチを防いで、早期離職を防止するようにしましょう。今回は採用ミスマッチの原因と対策方法について詳しく解説します。
目次
◆採用ミスマッチとは
採用ミスマッチとは、「人材を採用したい企業」と「仕事に就きたい求職者」で認識ズレが起きることをいいます。
企業側は採用した人材がスキル不足だと悩むことがあります。その一方で、従業員側は入社前後で期待と実態が違ったと幻滅してしまうことが多いです。
採用ミスマッチが起きると、従業員の士気が低下して離職してしまいます。そのため、採用ミスマッチが起きないように注意しましょう。
◆採用ミスマッチの例
どのような認識のズレで採用ミスマッチは起きるのでしょうか?採用ミスマッチの例を把握しておきましょう。
・企業風土のズレ
企業内の暗黙のルールや慣習と、従業員の性格が合わずにミスマッチが起きることがあります。
例えば、スピード重視で動ける自立した人が必要とされるベンチャー企業には、支持を的確に行いたい人には向きません。
企業風土は数値で示すことができず、求職者が的確に把握することはできません。求職者の性格や価値観と企業風土が合わないことによる早期離職は起こりやすいため、気を配るようにしましょう。
・仕事内容のズレ
企業が求めているスキルと求職者が保有するスキルのズレでミスマッチが起きることもあります。求職者のスキルは筆記テストや適性検査で測定することはできません。そのため、「この人は仕事ができる」と採用した人が見込み違いなことも起きます。
その一方で、企業は求人広告に具体的な仕事内容を説明しておらず、ミスマッチが起きることがあります。同じ部署に所属していても、基本的に仕事内容は各自で異なるものです。そのため、求人募集する際には、どのようなポジションの仕事であるかを具体的に伝えるようにしましょう。
・人間関係・価値観のズレ
企業で働く人と求職者の価値観が合わなければ、入社後に職場に馴染むことができません。労働条件が良くて入社を決めたけれど、直属の上司と相性が良くなかったなど、人間関係で悩む人がいます。
選考段階で職場の人達と会わせるなどの施策は現実的に難しいです。しかし、人間関係のミスマッチは起きやすいため、直属の上司は面接選考に参加するなど工夫をしましょう。
◆採用ミスマッチが引き起こす弊害
採用ミスマッチを放置すると、どのような弊害が出るのでしょうか?次に採用ミスマッチが引き起こす弊害をご紹介します。
・従業員のモチベーションが低下する
採用ミスマッチだと気づいた従業員の仕事に対するモチベーションは低下します。
「好待遇を希望していたけど、年功序列制度を導入していて叶わない」「風通しの良い職場と聞いていたけど、上司と気が合わない」などの状態では成果が出せないでしょう。
最悪の場合は、従業員が心身不調に陥りパフォーマンスが落ちてしまいます。入社してきた従業員がミスばかりするようになったら注意するようにしましょう。
・組織全体の生産性が落ちる
入社前後で期待と実態にズレがあった場合、リアルな情報を提供してくれなかった企業に不信感を抱いてしまい、衝突が起こりやすくなります。このようなチームワークの乱れがおきると、組織全体の生産性が落ちてしまいます。
・従業員が離職してしまう
採用ミスマッチが発生してしまい、従業員が入社後にギャップを感じてしまうと早期離職に繋がります。早期離職により、採用コスト分の損失が出てしまいます。
リクルート「就職白書2020」によると、新入社員の採用コストは93.6万円、中途社員の採用コストは103.3万円となっており、採用コストが無駄になってしまうのです。
◆採用ミスマッチの原因
採用ミスマッチが発生すると、企業は大きな損失を被ることになるため防ぐ必要があります。採用ミスマッチを防止するためにも、まずは原因を把握しておきましょう。
・採用基準を明確に定めていなかった
採用基準を明確に定めておらず、面接官の主観による人事評価をしてしまうと採用ミスマッチが起きやすくなります。
また、採用活動は第1次面接は人事担当者、第2次面接者は現場責任者、最終面接は経営陣が担当することが多いです。三者間で、どのような人材を採用したいか認識のすり合わせをしておかなければ、本当に求めている人材を採用できなくなります。
・スキル確認を怠ってしまった
履歴書や職務経歴書のスキルを把握するだけで、本当に実力があるのか、スキル確認怠ってしまい採用ミスマッチが起きることもあります。そのため、履歴書や職務経歴書の記載内容に矛盾がないかを面接で確認するようにしましょう。
「具体的にどのようなことを成し遂げましたか?」「最も苦労した経験を教えてもらえますか?」など質問すると、知識やスキルの度合いを把握できます。
・求職者の人柄を見抜けなかった
面接で求職者の人柄を見抜けずに、採用ミスマッチが起きることもあります。なぜなら、求職者は企業の内定を獲得するために、見栄を張って自分をよく見せようとするためです。
求職者が演技をしてしまうため、性格や思考、行動パターンなど本当に知りたい部分が把握できません。その結果、採用ミスマッチが起きてしまうのです。
・求人広告に良い部分しか掲載しなかった
求人情報に感じしている情報量が少ないと採用ミスマッチが起きてしまいます。一般的に、自社に不利な情報は開示しない企業が多いです。
なぜなら、自社の求人募集に応募してもらうためです。確かに求人広告では自社の魅力を書くことも大切ですが、厳しさなど悪いところも記載しなければ、求職者に自分に合う企業か判断できません。また、現場の意見が反映されておらず、業務内容や条件も曖昧な求人広告だとミスマッチが起きてしまいます。
・従業員のフォロー体制が整備できてなかった
採用ミスマッチが起きると、従業員がすぐに退職してしまうわけではありません。採用ミスマッチで不安や不満を抱えているにも関わらず、誰にも相談できなくてストレスを抱えてしまうことが退職に繋がってしまいます。つまり、従業員のフォロー体制が整備できていない企業ほど、従業員が離職してしまうのです。
◆採用ミスマッチの防止方法
採用ミスマッチの原因は理解できたと思いますが、どのように防止していけばよいのでしょうか?次に採用ミスマッチの防止方法をご紹介します。
・採用基準を明確に定める
採用基準を明確にしておき、面接官の主観による評価を排除すれば、採用ミスマッチが起きにくくなります。採用基準は「知識・スキル」「思考・行動」「人柄」の3つの要素について定めておきましょう。知識・スキルは職務内容から把握できますが、記載内容に矛盾がないかを面接で見極めることが大切です。
- 知識・スキル:求めたい知識やスキル
- 思考・行動:思考の傾向や行動パターン
- 人柄:仕事に対する価値観や信念
・適正テストを実施する
求職者に適性テストを受けてもらいましょう。適正テストを受けてもらうと、目に見えない人間性やストレス耐性などが把握しやすくなります。優秀な人材の適性テスト結果と傾向が強い人を採用すれば、自社で活躍してもらえるでしょう。
また配属先のメンバーと価値観が似ている人を採用すれば、チームが上手く回るなど、ミスマッチが起きにくくなります。
・インターンシップを導入する
インターンシップ(お試し入社)を導入すれば、採用ミスマッチが起きにくくなります。なぜなら、学生側は入社前に、仕事内容や職場の人間関係などを把握できるためです。
仕事内容や人間関係に同意した上で入社をすれば、入社前後でギャップが生じることはありません。また、会社側もどのような人が自社に合うか知る機会が得られます。あらゆる情報を得られて、自社に最適な人を採用できるためマッチ率を上げられます。
・求人広告に悪い部分も掲載する
求人広告にはメリットだけでなく、デメリットを掲載するようにしましょう。マイナスなことを記載しておくと、入社後でギャップが生じることはありません。そのため、新入社員のモチベーションが低下する心配もありません。
アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウスがRJP理論を提唱しましたが、プラス・マイナスの両方の情報を提示することで誠実さが伝わり信頼してもらえるという効果が見込ます。
・内定者のアフターフォローをする
内定通知書を出しても安心してはいけません。内定者は「本当に内定をくれた会社に入社をして大丈夫なのか?」と不安を抱いています。そのため、内定者をフォローするようにしましょう。
人事担当者が内定者と連絡をとって相談に乗ってあげたり、社内イベントに内定者を招待して交流の場を作ってあげたりなど、不安を払拭することが大切です。先輩社員との懇親会、ゲーム感覚で楽しめる社内イベントなどを催すことをおすすめします。
・1on1ミーティングを実施する
新入社員が入社をしてきたら、上司は部下と定期的に1on1ミーティングを実施して、業務に不安を感じていないかヒアリングしておきましょう。
部下の話を聞いて、必要に応じて業務負担を減らしたり、ストレスを低減できるようなポジションに変更したりしてあげましょう。定期的に1on1ミーティングを実施することで、上司と部下の信頼関係を構築していけます。
1o1ミーティングのやり方について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:『1on1ミーティングの目的とは?キャリア支援につながる正しい手順を紹介』
・メンター制度を導入する
新入社員が仕事の悩みを相談できるように、メンター制度を導入しましょう。メンター制度とは年齢の近い先輩社員が新入社員のサポートをする制度をいいます。先輩社員は他部署の人が最適です。なぜなら、他部署の先輩だからこそ、仕事の悩みを話しやすくなるためです。
新しい仕事を覚えるまでは不安を抱きやすく、ストレスにさらされています。そのため、メンター制度を導入して、新入社員をフォローしてあげましょう。
・キャリアパスを描く
新入社員や中途社員の将来の目標など不明確な状態だと、成長意欲が薄れてしまいます。そのため、どのようなキャリアを描きたいかを提示しましょう。マネージャーを目指すのか、スペシャリストを目指すのかを一緒に考えてあげることが大切です。
その中には、どのようなキャリアパスを描けばよいか分からない人もいます。このような場合は、ジョブローテーション制度で、さまざまな部署を体験させてあげると、どこが適しているか判断できるようになります。
◆採用ミスマッチが起きた場合の対処法
採用ミスマッチが起きた場合は、従業員の不満を聞いて可能であれば条件を叶えてあげます。
しかし、一般的に仕事に不満を抱いた従業員は退職届を提出してくるでしょう。退職届を提出されたら、基本的には相手の気持ちを尊重しないといけません。
同じような理由で退職してしまう人が増えないように、退職面談で退職理由を聞いて、職場改善に役立てましょう。しかし、多くの従業員が退職理由に建前を述べます。そのため、従業員の本音を聞きたい場合は、第三者機関の調査会社に依頼することをおすすめします。
退職面談のやり方について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『人事担当者向け退職面談のやり方!職場改善に役立つ本音の引き出し方』
◆まとめ
採用ミスマッチとは、「人材を採用したい企業」と「仕事に就きたい求職者」で認識ズレが起きることをいいます。「企業風土」「仕事内容」「人間関係」の3つの要素でミスマッチが起きやすいです。
採用ミスマッチが起きると、従業員の仕事に対するモチベーションが落ちて、生産性が下がってしまいます。そのため、採用ミスマッチが起きないように対策しておきましょう。ぜひ、この記事を参考にしながら、採用ミスマッチの対策に取り組んでみてください。
採用ミスマッチを防止するためには、どのような箇所が至らなかったのか、従業員からホンネを聞くことが大切です。従業員のホンネを聞きたいという方は『エグジットインタビュー』をご利用してみてください。