エース社員の離職は会社に大きな影響を与えます。エース社員に依存していた場合は、生産性が低下したり、他の従業員に業務負荷がかかり退職の連鎖が起きたりするなど問題が生じてしまうかもしれません。このような問題を防止するためには、どうしたら良いのでしょうか?
今回は、エース社員の離職の原因について解説します。この記事を読めば、離職を防止する方法やエース社員に依存しない組織作りまで理解できるようになります。優秀な社員が満足して働ける環境を整えたいとお考えの方は、ぜひ、この記事を参考にしてください。
目次
◆ [はじめに]エース社員の特徴
まずは、どのような特徴を持っている人をエース社員と呼ぶのか把握しておきましょう。なぜなら、エース社員の特徴を理解しておくことで、離職防止のための対策が理解できるようになるためです。
エース社員とはスキルが高く会社の中心となり活躍している人材をいい、以下のような特徴を持っている人をいいます。
[エース社員の特徴]
- 目標達成を意識している
- 優先順位を立てて仕事している
- 積極的に物事に取り組む
- 客観的に物事を考えられる
- 周囲に配慮ができる
- 自己管理を徹底している
◆ エース社員が離職する原因
今まで企業に貢献してくれていたエース社員が、突然辞めてしまうのはどうしてなのでしょうか?離職の原因を理解できれば対策が打てます。したがって、エース社員が離職してしまう原因を把握しておきましょう。
・ 会社の方針に賛同できない
経営方針に賛同できない場合に、エース社員は離職してしまいがちです。その理由は、経営方針に納得できないと「前の方が仕事にやりがいを感じられた」「会社の方針に賛同できずに仕事に対するやりがいを感じられない」などと不満が募ってしまうためです。
上司に聞き入れてもらえない場合は、給与や待遇が良い環境であっても退職してしまう恐れがあります。
・ 裁量が与えられていない
エース社員は向上心が高く、常に成長できる機会を探している傾向にあります。そのような社員の場合、指示された仕事をこなすだけだと仕事に物足りなさを感じてしまうでしょう。
例えば「新しい企画を提案しても挑戦できない」「自分に裁量が与えてもらえず、何も決められない」という状況が続くと不満が募ります。その結果として、自分の実力を試せる裁量権が大きい会社に転職してしまうのです。
・ キャリアが見込めない
キャリアに関する不満は、離職につながるきっかけとなります。なぜなら、エース社員は将来のビジョンを描き意欲的に働きたいと思っているためです。
しかし、年齢や勤続年数によって昇進が決まる会社もまだまだ存在しています。「昇進するにはあと5年はかかる」「役職が空いていないから昇進できない」などの理由で退職を検討し出すかもしれません。
今後の成長が見込めないと感じて転職に至るケースも多く見受けられるため、社員のキャリア形成について考えてあげる必要があります。
・ 業務量が多い
エース社員の業務量が多くワークライフバランスを保てないと、心身ともに疲弊してしまいます。その結果、身体を壊してしまったり鬱病を患ったりするケースも珍しくありません。
エース社員の中には、部下の管理や現場の仕事、さらには他の部署の仕事など幅広い業務を任されている方も見受けられます。このように業務量の負担が大きすぎると、エース社員は離職してしまいます。
・ 適正な評価を受けていない
仕事の成果に見合った評価を受けていない場合、エース社員は退職してしまいます。その理由は、「頑張りに見合った評価をしてもらえない」と会社に不信感を抱くためです。
- 給与が割に合っていない
- 大幅な給与アップが望めない
- 上司に気に入られている社員だけが評価される
上記のような不満は、エース社員の離職につながる原因のため気をつける必要があります。
・ 職場の人間関係で悩んでいる
人間関係の悩みもエース社員の退職の原因です。仕事ができるが故に上司に嫌われたり、同僚から嫉妬されたりする場合もあり、職場で孤立すると社内での居心地が悪くなります。このような人間関係のストレスにより、エース社員が退職する恐れがあります。
・ 育児や介護との両立が難しい
働く意欲はあるものの、育児や介護との両立が難しく退職を決断するエース社員も見受けられます。
女性がエース社員の場合、妊娠や出産がきっかけとなり退職する可能性があります。また、親の介護が必要となり、地元に戻って再就職するケースも考えられるでしょう。
時短勤務やリモートワークなど、育児や介護と両立できるような環境が整備されていない会社だと、退職を選択せざるを得ない状況となります。
・ 他社からスカウトされた
即戦力となる優秀な社員は、他社からスカウトされ離職する可能性があります。エース社員の評判が社外に伝わっているケースも多く、取引先や競合他社から「うちの会社にこない?」と誘われる場合も多いです。給与などの待遇が現状より良ければ、転職を選択されてしまうこともあります。
◆ エース社員の離職が与える影響
エース社員の突然の退職により、職場が混乱に陥ることもあります。エース社員が退職すると、どのような影響を企業は受けるのでしょうか?次に、エース社員の離職が与える影響について解説します。
・ 生産性の低下
エース社員の離職が与える影響のひとつとして、生産性の低下があげられます。効率よく業務をこなしていた社員が退職すると、人手が足りなくなり業務量をこなすことが難しくなります。
また、エース社員が営業職の場合は売上が下がってしまうかもしれません。「〇〇さんだからお願いしていたのに」と取引が終了するケースも十分に考えられるためです。したがって、会社の中心人物として活躍していたエース社員の退職は生産性の低下を招きます。
・ 社員の負担の増加
エース社員が退職してしまうと、他の社員が代わりに業務をカバーしなければいけません。優秀な社員に業務が集中していた場合、残りの人ではカバーしきれない場合もあります。人手が足りず、業務が回らなくなることも多いです。
・ 従業員のモチベーションの低下
エース社員の離職は、残された社員のモチベーションにも大きく影響します。優秀な社員は周囲の従業員からの信頼も厚く、エース社員に憧れを抱く社員も少なくありません。
お手本としていた社員がいなくなることにより仕事の意欲が低下して、社内の士気が下がる恐れがあります。
・ 離職率が上がる
エース社員の離職がきっかけとなり、人材が相次いで流出する場合があります。「〇〇さんが退職したなら自分も…」「業務の負担が増えて忙しすぎる」と他の社員が続けて退職するケースも見受けられます。
離職率が上がると「採用コストが増加する」「人材不足により業績が低下する」など、深刻な問題に発展してしまうため注意が必要です。
◆ エース社員が離職する予兆
エース社員の退職は企業にさまざまな影響を与えます。そのため、エース社員が退職する予兆を見逃さないようにしましょう。ここでは、エース社員が離職する予兆をご紹介します。
・ コミュニケーションが減る
エース社員の離職の予兆として、社内でのコミュニケーションの減少があげられます。退職すれば職場の人とは関係がなくなるため、必要以上に関わるのはやめようと一線を引いてしまうのです。
「ランチに誘われても行かない」「同僚との雑談が減った」など、エース社員が独りで行動をするようになった場合は、退職を検討している予兆と考えた方がよいでしょう。
・ 会議で発言をしなくなる
エース社員の会議での発言が減ったという場合は注意が必要です。大抵の社員は、退職を決意したら業務にやる気がなくなります。
「もう会社を辞めるから与えられた仕事をこなすだけで良い」と考え出し、その結果、以前のような積極的な発言が見込めなくなります。
・ 休暇を取得するようになる
転職の面接は平日に行われることが多く、有給休暇を使用して転職活動を行っている可能性があります。また、退職に向けて有給を定期的に消化しておこうと計画しているケースも考えられるでしょう。
そのため、エース社員が頻繁に休みを申請するようになったら、転職を視野に入れて動いていると考えてフォローするようにしましょう。
◆ エース社員の離職を防止する方法
エース社員が離職する予兆を捉えたら、どのような対応をすれば退職を思い留めることができるのでしょうか?次に、エース社員の離職を防止する方法をご紹介します。
・ 経営層と話す機会を設ける
エース社員の離職を未然に防ぐために、経営層と話す機会を設けましょう。
会社の目標と社員の目標が乖離している場合、エース社員が仕事にやりがいを感じることは難しく、その結果退職へとつながります。
お互いのビジョンをすり合わせて同じベクトルを向くことができれば、エース社員のモチベーションアップが期待できます。
・ 相手を信用して裁量を与える
エース社員を信用して裁量権を与えることは、エース社員の離職防止策として効果的です。エース社員は成長意欲が高い傾向にあるため、現在の仕事に物足りなさを感じているかもしれません。
新しいプロジェクトの責任者を任せるなど、裁量の大きい仕事を任せてみましょう。エース社員は、自己成長や仕事のやりがいをさらに感じられるようになるため、満足感を持って働けるようになります。
・ キャリア形成を支援する
エース社員が目指すキャリアを実現できるよう、まずはキャリア面談を実施してみましょう。
社員の希望に応じて、「役職を与える」「必要な研修を実施する」「希望の部署への異動をサポートする」などの対応を行うことで社員のモチベーションを高められます。
・ 業務量を調整する
業務過多が続いて体調を崩す方や、家庭と仕事の両立ができずに退職する方が見受けられます。
このような退職を防ぐために「バックオフィス業務をアウトソーシングする」「自動化システムを導入する」「業務を再分配する」などの施策を行い業務量を見直しましょう。
業務を見直すことでエース社員の業務量に関する不満を取り除くことができ、定着度を向上させられるでしょう。
・ 人事評価を見直す
エース社員の離職を防止するために人事評価の見直しを行いましょう。その理由は、評価制度が不透明だと、どのように成果を評価されているのか分からず、企業に対する不信感が生まれるためです。
評価基準を明確化し、見える化することでエース社員が納得感を持って働けるようになります。現在の人事評価が正しく機能しているかを確認して評価項目や基準を再設計しましょう。
・ 人事制度を整える
人事評価を見直したら、次は人事制度全体を整えましょう。報酬制度や等級制度、人事管理制度、福利厚生などを再度整備することで、エース社員をはじめとする従業員全員が働きやすい環境を実現できます。
人事制度は、事業の拡大や従業員の増加によって人事制度が合わなくなる可能性があるため、定期的な見直しをしましょう。
◆ エース社員に依存する組織を脱却する方法
エース社員が満足して働ける環境を整えたとしても、必ず離職を防止できる訳ではありません。離職によるダメージを最小限に抑えるためには、エース社員に依存しない仕組みを構築する必要があります。ここでは、エース社員に依存する組織を脱却する方法をご紹介します。
・ 若手エース社員を育成する
若手社員を育成し、社員の実力の底上げを図りましょう。優秀な社員が増えると特定の社員に対して依存しなくなるため、離職時のリスクが分散されます。エース社員を育成する方法は以下の通りです。
- スキルアップ研修を実施する
- 1on1ミーティングを定期的に行う
- メンター制度を導入する
有能な社員が複数育てば、仮にエース社員が離職した場合でも組織が機能しなくなる事態を避けられます。
・ 業務標準化を目指す
業務を標準化し、誰でも同じ品質で業務ができるようになれば、エース社員への依存を軽減できます。
例えば、優秀な社員のノウハウをマニュアル化すれば、社内で知識を蓄積でき社員の教育にも役立ちます。さらに、業務の標準化により日々の業務効率がアップし、生産性の向上も期待できるでしょう。
・ 組織力を高める
社員の実力アップだけでなく、組織全体を強化することも重要です。組織力を強化するために、まず社員同士が気軽にコミュニケーションを取れる環境を整備しましょう。
- 社内SNSを導入する
- オフィスをフリーアドレス化する
- 経営層が積極的に情報発信する
- オンラインイベントを開催する
上記のような施策に取り組むと、社内のコミュニケーションが活発化し組織に一体感が生まれます。組織力が強化されると社員が自発的に行動するようになり、組織全体のパフォーマンスが向上します。
◆ まとめ
会社の中核を担うエース社員の離職は、会社に大きな影響を与えます。エース社員の離職による混乱を避けるためにも、早いうちから対策を打っておきましょう。
この記事では、エース社員の離職防止対策や、エース社員に依存しない組織作りをご紹介しました。これを機会に、エース社員の退職の予兆を発見して離職防止の対策をしてみてください。
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