さまざまな企業がウェルビーイング経営に取り組み始めています。従業員が心身共に健康で社会的に満たされた状態で働けるように、どのような取り組みをしているのか知りたい方は企業事例を参考にしましょう。
今回はウェルビーイング経営の事例をご紹介します。ウェルビーイングを成功させるコツまで解説しているため人事施策にお役立てください。
目次
[はじめに]ウェルビーイング経営とは
ウェルビーイング(Well-being)とは心身共に健康で社会的にも満たされている状態をいいます。そして、ウェルビーイング経営は企業の利益を追及するだけでなく、従業員の幸福を追及する経営手法です。ウェルビーイング経営により、従業員1人1人のエンゲージメントを高めて、意欲的に仕事をしてもらえるようになります。「生産性向上」「離職防止」「企業価値の向上」を見込むために、ウェルビーイング経営に取り組む企業が増えてきています。
ウェルビーイング経営のメリット
ウェルビーイング経営には5つのメリットがあります。
- 従業員満足度が向上する
- 会社への帰属意識を高められる
- 仕事に意欲的に取り組んでもらえて生産性が向上する
- 仕事が充実するため離職防止ができる
- 働きやすい職場で優秀な社員を採用しやすくなる
ウェルビーイング経営に成功している企業事例
ウェルビーイング経営の取り組み方を知りたい方は、他社事例を参考にしましょう。ここでは、ウェルビーイング経営に成功している企業事例をご紹介します。
出典元:『Google』
Googleは検索エンジンや広告などインターネット関連サービスを提供している会社です。同社は2012年に「Project Aristotle」と総称されるリサーチを行いました。リサーチの目的は生産性の高いチームづくりです。このリサーチの結果、生産性の高いチームには以下のような特徴があることを発見しました。
- 心理的安全性:どのような発言も受け入れてもらえる
- 信頼性:チームメンバー同士が信頼し合えている
- 明瞭さ:努力すれば達成できる環境が用意されている
- 仕事の意味:仕事にやりがいを感じられる
- インパクト:社会に対して良い変化をもたらしていると思える
このようにGoogle社は「Project Aristotle」のリサーチ結果を参考に、従業員が活き活きと働ける職場を作っています。
ライオン株式会社
出典元:『ライオン株式会社』
ライオン株式会社は、洗剤・石鹸・歯磨きなど化学製品を手がける大手生活用品メーカーです。同社は「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を経営ビジョンに掲げ、一人ひとり従業員の心と身体のヘルスケアを実現するために、生活習慣改善などへのサポートを行っています。
ウェルビーイング経営を推進するために、社内に健康サポート室を設置し、産業保健スタッフと連携し合いながら従業員の健康管理を推進しています。健康サポート室の主な業務は健康保持増進を目的とした施策の立案と実行です。
取り組み事例として、健康習慣を楽しく前向きなものにリ・デザインするために、健康管理システム「GENKIナビ」を開発があります。GENKIナビは健康状態が分かるだけでなく、将来の健康リスクが見える化機能が搭載されており、健康リスクが把握できます。このような主体的な取り組みで、従業員の健康管理を促進しているのです。
株式会社博報堂
出典元:『株式会社博報堂』
株式会社博報堂は、国内で最も長い歴史を持つ広告代理店です。同社は新型コロナウイルス感染防止によるテレワークの長期化でメンタルを崩す従業員をフォローできるように、株式会社ラフールと業務提携してサーベイツールを開発しました。
このサーベイツールは、アンケート調査結果から、従業員のタイプを導き出せるようになっています。
- スタイリッシュタイプ:自分磨きを楽しめる人
- 脱ストレスタイプ:ライフワークバランスで自分の時間を作りたい人
- 身近な非日常タイプ:環境の変化を好む人
- セレンディピティタイプ:どんなことにもチャレンジする人
- ポジティブタイプ:周囲との良好な関係を望む人
従業員のタイプを把握して、各自が活き活きと働ける環境を整備しています。
楽天グループ株式会社
出典元:『楽天グループ株式会社』
楽天株式会社はインターネット通販が楽しめる総合ショッピングモール「楽天市場」をはじめ、幅広いサービスを提供しているインターネット会社です。
同社は独立採算制で各部門を設置されていますが、その中の1つに「コーポレートカルチャー部門」があります。この部門では、個人・組織・社会の3つの観点からウェルビーイング施策が立案して推進しています。
- 個人:従業員の心身の健康を向上させる
- 組織:心理的安全性が高く仕事にやりがいが感じられる職場をつくる
- 社会:持続可能な未来のために社会貢献活動をする
具体的な取り組み事例として、リモートワークで働いている方向けに、首肩こり・腰痛改善に役立つ!実践姿勢学セミナーなどが挙げられます。このようなセミナーには毎回400名程度の従業員が参加しています。
株式会社丸井
出典元:『株式会社丸井』
株式会社丸井は首都圏を中心にファッションビル業態の商業施設を展開している日本企業です。早期から従業員の健康を考えてウェルビーイング経営に取り組んできました。
ウェルビーイング経営の変遷
- 2008年:丸井健康保険組合がヘルスアッププラグラムを開始
- 2011年:健康管理委員制度を導入、健康管理室を新設、専属の産業医が着任
- 2013年:ウェルネスリーダー制度を導入
- 2014年:健康推進部を新設、セルフケア教育の開始
- 2015年:健康経営推進最高責任者(CHO)設置
- 2016年:レジリエンスプログラムを導入、社外アドバイザーを選任
- 2018年:日本健康マスター検定の団体受験を導入
- 2019年:女性の健康検定の団体受験を導入
- 2020年:健康推進部の名称を「ウェルネス推進部」に改称
- 2022年:ウェルネス推進部の名称を「ウェルビーイング推進部」に改称
同社はウェルビーイング経営を担う部署を設けて取り組んでおり、取り組みは高く評価されています。
トヨタ自動車株式会社
引用:『トヨタ自動車株式会社』
トヨタ自動車株式会社は日本が誇る自動車メーカーです。同社は37万人の従業員と家族、これからのトヨタを支える次世代のためにトヨタフィロソフィー(果たすべき使命&実現したい未来)を定義しています。
トヨタフィロソフィーの果たすべき使命には「幸せを量産する」と掲げられています。
「幸せの量産」とは、決して同じものを大量生産するという意味ではありません。多様化に向き合い、1人1人の幸せを叶えるという意味です。トヨタ自動車は、果たすべき使命のために、職場環境づくりに取り組んでいます。近年では、トヨタ自動車を退職しキャリアを磨くことも認めて、再雇用するアルムナイ制度を導入するなど、さまざまな工夫をしている企業です。
積水ハウス株式会社
引用:『積水ハウス株式会社』
積水ハウスは大手ハウスメーカーです。同社は従業員が幸せでなえればお客様を幸せにできないと考えのもと、企業理念に「人間愛」が掲げられています。人間愛を心がけていれば、苦楽を共に共有できる仲間を作れて充実感が得られると謳われていることが大きな特徴です。
人間愛を持っていれば、取引先と共存共栄ができて、お客様には満足してもらえます。このような根本哲学を企業理念に掲げることで、業績を伸ばしている企業です。
ウェルビーイング経営事例でわかる成功のコツ
ウェルビーイング経営を行う企業事例をご紹介しましたが、高く評価されている企業には次のような共通点があります。
経営者の意識改革をする
ウェルビーイング経営に取り組むためには、時間と労力がかかります。経営者は会社の利益を追求する立場にいるため、直接利益に繋がらないウェルビーイング経営を後回しにしてしまいがちです。
ウェルビーイング経営で従業員に活き活きと働いてもらえている企業は、中長期的な視点で取り組んでいます。このような経営者の意識改革を行えるかが、ウェルビーイング経営の成功を左右します。
ウェルビーイング推進部門をつくる
ウェルビーイング経営に成功している企業は、ウェルビーイング推進部門を作り、従業員に対するアンケート調査や施策の立案、実行を行っています。職場の健康管理を部門で行うことで、健康に関する知識を持った担当者が役割を担えるようになり、効果の高い取り組みが行えるようになります。
従業員が職場に求めているものを把握する
ウェルビーイング推進部門で施策を実行していきますが、従業員が求めているものでなければ喜ばれません。そのため、従業員が心身健康で意欲を持って働ける環境には何が必要かアンケート調査しましょう。従業員が職場に求めているものを把握する場合は、定量データと定性データを収集しましょう。
定量データで従業員が職場に求めている傾向が分かり、定性データで具体的な内容が分かるようになります。アンケートに回答してもらうときには、査定などに影響しないことを伝えて本音で回答してもらうようにしましょう。
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労働環境を見直す
従業員が職場に求めているものを把握できたら、その意見を参考にしながら労働環境を見直していきます。
例えば、度重なる残業や休日出勤で心身に大きな負担を抱えている従業員がいた場合は、デジタルツールで業務効率化をするなど対策を行い労働環境を改善していきます。
また、オフィスデスクが狭いなど悩みを抱えている従業員がいたら、新しいものに見直しましょう。このように労働環境を見直すとイキイキと働ける職場がつくれます。
キャリア支援を行う
従業員が心身共に健康で充実感を抱きながら仕事できるように、キャリア支援を行いましょう。キャリア面談を実施して、キャリアプランを策定して支援します。必要に応じて、従業員が習得したいスキル開発を支援したり、実践する場を提供したりしてあげましょう。スキルを習得した従業員を評価してあげると、仕事に充実感を抱けるようになります。
多様な働き方を実現する
従業員の働き方に対する価値観は多様化しています。例えば、仕事熱心に取り組みたい方もいれば、育児と仕事を両立したい方もいます。このように働き方は多様化してきたため、1人1人が満足しながら働けるような労働環境を整えましょう。
多様な働き方について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『多様な働き方の種類を一覧表でまとめて紹介[雇用制度や雇用形態]』
福利厚生を充実させる
福利厚生は、従業員とその家族の生活の質を向上させるものを選びましょう。福利厚生を充実させることで「従業員のことを考えてくれている会社だ」と信頼を構築できます。また、さまざまな福利厚生がありますが、以下のようなウェルビーイングにつながるものを選ぶとよいです。
まとめ
ウェルビーイング経営は従業員が心身共に健康で意欲的に働ける職場を作り、生産性向上や離職防止の効果を見込むために取り組むものです。この記事では、ウェルビーイング経営に成功している企業事例をご紹介しました。
従業員の職場に対する声や抱えている悩みなどホンネを聞き、職場改善するとウェルビーイング経営に成功しやすいです。そのため、従業員のホンネを聞き出しましょう。
イグジットインタビューいっとは、第三者である専門インタビュアーによるヒアリングと独自システムを活用して従業員のホンネを引き出すサービスです。もし、従業員の職場に対する不満や要望を引き出せないとお悩みの場合は、イグジットインタビューいっとにご相談ください。下記よりサービス資料請求ができます。