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2022.10.14

ハラスメント相談窓口とは?設置方法から相談の流れまで解説

仕事をする上で人格を否定されたり、侮辱的な言葉を浴びせられたりしてメンタル不調に陥る人が相次いでいます。厚生労働省「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争の相談件数は27万8,778件で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が最多となりました。

このような背景により、2020年6月にパワハラ防止法が施行されたのです。パワハラ防止法では、企業内にハラスメント相談窓口を設置することが義務化されているため準備を始めましょう。この記事では、設置が義務化されたハラスメント相談窓口について詳しく解説します。

◆ ハラスメント相談窓口とは


ハラスメント相談窓口とは、従業員からハラスメントに関する悩み相談を受け付ける窓口をいいます。初期段階で問題に気づき対策することで、働きやすい職場環境を整備していきます。ハラスメント相談窓口に寄せられる相談はデリケートな内容が多いため、秘密を厳守するように努めましょう。相談窓口は、正社員以外にも派遣社員、パート、アルバイトの方々まで利用できます。

企業でパワハラ問題が多く取り上げられるようになり、2020年6月1日にパワハラ防止法が施行されました。それに伴い、企業でハラスメント相談窓口の設置が義務化されました。大企業は2020年6月1日までに、中小企業は2022年4月1日までに窓口を設置するようにしましょう。

◆ ハラスメント相談窓口の設置方法


ハラスメント相談窓口を設置する際の手順は以下の通りです。

1.ルールを決める
2.運用方法を決める
3.周知させる

ここでは、各手順について詳しく解説していきます。

・ ルールを決める

まずは、ハラスメント相談窓口に関するルールを決めていきます。ルールとして、以下のような内容を決めていきます。

・罰則規定の適用条件や処分内容に関すること
・相談者の不利益な取り扱いを禁止すること
・相談内容の秘密保持に関すること

ルールの抜け落ちなどが心配な場合は、労働組合などに相談して意見を聞くと良いです。具体的にルールを決めておくと措置の適用がしやすくなります。また、自社で運用するべきか、代行サービスで運用するべきか判断がしやすくなります。そのため、窓口を設置する前にルールを決めておきましょう。

・ 運用方法を決める

次にハラスメント相談窓口の運用方法を決めていきます。運用方法には、(1)社内に窓口を設置する方法と(2)外部窓口サービスを利用する方法があります。それぞれのメリット・デメリットを把握した上で運用方法を決めましょう。


社内に窓口を設置する場合は、相談窓口が低コストで設置できます。また、直接通報を聞けて早期改善がしやすくなります。

しかし、法令に関する知識が必要で、相談者と行為者の仲介をする担当者の負担が大きくなりがちです。そのため、社内に窓口を設置する場合は担当者のケアを忘れずにしてください。

法令に準拠した相談窓口が設置できるか不安を感じる方は、外部窓口サービスの利用を検討しても良いでしょう。外部相談窓口サービスは、月額5,500円(税込)から利用できるものがあり、比較的導入しやすいです。

・ 周知させる

次に従業員に利用してもらうために周知します。社内にポスターを貼り付けたり、冊子にして配布したりします。また、人事採用や人事評価のときに、ハラスメント対策に取り組んでいる旨を伝えるのも良いでしょう。

相談窓口を利用してもらえるように、年1回程度ポスターを作り替えるなどすると周知効果が高められます。

◆ ハラスメント相談窓口を設置する上でのポイント


ハラスメント相談窓口の設置方法を解説しましたが、設置する上でのポイントを押さえておきましょう。

・ さまざまな相談方法を用意しておく

ハラスメント相談窓口を設置する場合は、さまざまな相談方法を用意しておきましょう。その理由は、内容次第では対面で話せないと思う方もいるためです。そのため、対面、電話、メール、手紙、ビデオ通話、チャットツールなどの相談方法を用意しておき、多くの方に利用してもらえるようにしましょう。

・ 相談内容の匿名性を守る

通報者が匿名を希望しているにも関わらず、それを無視して行為者に対する聞き取りをすれば、通報者が特定されてしまう恐れがあります。その結果、行為者が通報者に報復するなど二次被害が生じてしまうかもしれません。

このような被害が出ると「社内のハラスメント相談窓口は利用するべきではない」とネガティブな気持ちを抱かれ、企業に対する信頼も損なわれます。そのため、相談内容の匿名性は守るようにしましょう。

・ 相談窓口担当者への教育を行う

相談窓口担当者には、ハラスメントに関する基礎知識を身に付けてもらう必要があります。そのため、担当者には研修を受講してもらいましょう。ハラスメント研修では以下の内容が学べます。

・ハラスメントに関する基礎知識
・ケーススタディ
・相談対応の留意点
・相談の進め方
・事実確認の方法
・問題解決のための対応
・ロールプレイによる実践

ロールプレイができて実践力が身に付く研修がおすすめです。

◆ ハラスメント相談の流れ


ハラスメント相談窓口を設置できたら、相談の流れを把握しておきましょう。ハラスメント相談の流れは以下の通りです。

[ハラスメント相談の流れ]

1.相談内容を聞く
2.事実関係を確認する
3.行為者や相談者の措置を検討する
4.行為者や相談者のフォローをする

それぞれの手順について詳しく解説します。

1.相談内容を聞く

相談内容を聞く場合は、相談者の印象や出来事で判断せずに話を聞くように努めましょう。話を聞く場所も、話し声が漏れないような場所にするなど配慮が必要です。

また、相談を受ける前に、相談者のプライバシーを尊重して人権に配慮しましょう。相談したことで不利益を受けない旨を伝えて安心させてあげてください。相談者が訴えたいことを自由に話せる環境を作り、時間をかけて丁寧に聞くことが大切です。

2.事実関係を確認する

相談窓口の内容を「ハラスメント相談記録票」に記録して、相談者の了解を得た上で事実関係を確認していきます。事実確認をする場合は、窓口担当者は中立的な立場で行為者の話を聞くことが大切です。

事実確認は第三者から話を聞くことも効果的ですが、相談内容が情報漏洩しないように注意してください。

3.行為者や相談者の措置を検討する

事実関係を確認できたら、行為者や相談者の措置を検討していきます。どのような措置を講じれば良いか迷う場合には、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してみてください。就業規則に基づいた措置を講じれば、労働者側に不満を持たれずに済みます。

ハラスメントに関する措置の例

・減給
・降格
・けん責
・出勤停止
・諭旨解雇
・懲戒解雇

4.行為者や相談者のフォローをする

ハラスメントに関する措置を講じたら、相談者と行為者に対して、取り組んだ内容を説明して理解してもらいます。問題が起きた原因を説明して、同じような問題が起きないように継続的なフォローをしましょう。

措置を講じても同じことを繰り返す行為者には目を配り、定期的な面談をしてください。このような取り組みで再発防止に努めます。

◆ ハラスメント相談窓口の設置でよくある質問


最後にハラスメント相談窓口の設置でよくある質問をご紹介します。

Q.ハラスメント相談窓口では、どのような相談がされますか?

ハラスメント相談窓口では、以下のような相談がされます。

Q.ハラスメント相談窓口を設置すれば問題は解決できますか?

ハラスメント相談窓口を設置すれば、全ての問題が解決できるわけではありません。しかし、相談者の相談内容に傾聴して、可能な限り解決してあげましょう。社内で判断しにくい問題は、ハラスメント対策に詳しい法律事務所や社会保険労務士事務所に相談して解決してください。それでも解決できない場合は、労働者専用の外部相談窓口を薦めてみる方法もおすすめです。

Q.ハラスメント相談窓口を自社運用する場合の注意点は?

自社運用する場合は、人事部や総務部がハラスメント相談窓口担当者に選任されることが多いです。ハラスメント相談窓口担当者は男女1人ずつ選び、上長として責任者を1人選びましょう。少なくとも3人以上のチーム形成をおすすめします。

◆ まとめ

今回はハラスメント相談窓口の設置方法、ハラスメント相談の受け方をご紹介しました。パワハラ防止法により、各企業でハラスメント相談窓口の設置は義務化されました。大切な従業員に安心・安全に勤務してもらうために、これを機会に正しい設置、運用ができているか見直してみてください。

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