求人募集の際に会社概要欄に平均勤続年数を記載することがあります。平均勤続年数が長いと、どのようなメリットがあるのでしょうか?逆に平均勤続年数が短いと、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
今回は平均勤続年数について詳しく解説します。この記事を読めば、平均勤続年数の計算方法が分かるようになり、平均値と比較して長いのか短いかが分かるようになります。
また、平均勤続年数を伸ばす取り組みまで紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
◆ 平均勤続年数とは
平均勤続年数とは、現在勤務している社員の勤続年数を平均した数字です。現在勤務している社員の中に新入社員が多く含まれる場合は、平均勤続年数は短くなります。
また、全社員に占める新入社員の割合が多い企業でも平均勤続年数は短くなります。そのため、平均勤続年数=離職率が高いと一概に言えるものではありません。
しかし、平均勤続年数を気にする就職生も多くいて、採用説明会や面接で尋ねられることがあります。それだけでなく、職場の状況を俯瞰視するためにも意識した方がよい数字です。
◆ 平均勤続年数の計算方法
平均勤続年数は「社員の勤続年数の合計÷社員の総人数」で計算します。
例えば、社員5名の会社で勤続年数が「3年」「5年」「10年」「15年」20年」の場合、平均勤続年数は、(3年+5年+10年+15年+20年)÷5人=10.6年となります。
◆ 勤続年数の平均値
平均勤続年数の計算ができたら、他の会社と比較してみることで会社の状況を俯瞰視できるようになります。そのため、会社の勤続年数の平均値を把握しておきましょう。
・ 全体の平均勤続年数
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると企業全体の平均勤続年数は12.4年です。男女別では、男性の平均勤続年数が13.9年、女性の平均勤続年数が10.1年となります。
平成時代に遡っても、企業全体の平均勤続年数は約12年と変わりはありません。そのため、新入社員を積極的に採用していない企業は、この平均勤続年数を1つの基準として職場を見直すとよいでしょう。
・ 規模別の平均勤続年数
行政が独自調査した「正社員の平均勤続年数」によると、規模別の平均勤続年数は以下の通りです。新入社員を採用する大企業では平均勤続年数が低くなります。
◆ 業種別の平均勤続年数
行政が独自調査した「正社員の平均勤続年数」によると、業種別の平均勤続年数は以下の通りです。
◆ 平均勤続年数の重要性
平均勤続年数を計算して、他の企業と比較して現在の職場を俯瞰視することが大切だと述べました。なぜ、平均勤続年数が長い方が良いのでしょうか?次に平均勤続年数の重要性を解説します。
・ 組織全体の生産性が上がる
平均勤続年数が長さは、業務を熟知した中堅社員が在籍する比重が多いことを意味します。
業務を熟知した中堅社員は、業務効率化を目指して仕事に取り組んでいます。また、業務の担当者で何度も経験しているため、業務の正確性もスピードも高いです。
会社の業績に好影響を与えて、貢献度が高い社員は、自社の業務内容を熟知している中堅社員となります。
したがって、平均勤続年数を計算して、社員が働きやすい職場を実現できるのか俯瞰視することが大切なのです。
・ 企業イメージが上がる
平均勤続年数が長い企業は「社員を大切にする会社」「長く働き続けられる会社」だと思われます。その結果、企業イメージが上がり優秀な人材が採用しやすくなります。
平均勤続年数が低い=離職率が高いと一概に言えるものではありません。
しかし、国税庁が企業の平均勤続年数は12年と発表しているため、10年以下だとブラック企業ではないかと判断されてします。その結果、人材採用で優秀な人を採用できなくなってしまうのです。このような問題を防止するために、平均勤続年数を上げていきましょう。
◆ 平均勤続年数が長い企業の取り組み事例
社員が長く働ける職場づくりに成功し平均勤続年数が長い企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか?職場づくりのヒントになるため、平均勤続年数が長い企業の取り組み事例を把握しておきましょう。
・ 株式会社高島屋
出典元:『株式会社高島屋 公式ホームページ』
株式会社高島屋は老舗の大手百貨店です。平均勤続年数は24.1年で、小売業では定着率が高いと有名な企業です。
同社は「人を通じたサービスによって新たな付加価値を提供する」を目標に掲げており、よりよい接客サービスを提供するためには、従業員の働き甲斐が不可欠だと考えています。そのため、仕事の進め方や働き方を見直して、職場環境を改善しているのです。
具体的な取り組みとして、デジタルを活用した働き方の推進やワークライフバランスの両立支援などがあります。その中でも、出産・育児・介護看護・傷病・不妊治療などに関わる休暇制度が充実しており、ライフスタイルの変化やタイミングにおいて、自分に適した働き方ができると社員の定着に成功しています。
・ キャノン株式会社
出典元:『キャノン株式会社 公式ホームページ』
キャノン株式会社は、カメラ・ビデオをはじめとする映像機器を製造する日本の大手精密機器メーカーです。平均勤続年数は20.1年で、情報通信業では定着率が高いと有名な会社です。
同社は行動指針に「三自の精神」を掲げており、自ら成長意欲を持った社員を積極的に支援しています。現場に役立つ実践力、役割に応じた階層別プログラム、ビジネススキル、語学力など幅広い研修が用意されています。
また、グローバルリーダーを育成するプログラム「トレーニー制度」もあり、さまざまなキャリアを描けることも大きな特徴。さらに、ワークライフバランスにも取り組んでいます。自分の理想のキャリアが築けるとして、社員の定着に成功しています。
・ YKK株式会社
出典元:『YKK株式会社 公式ホームページ』
YKK株式会社は、住宅用商品(窓・サッシ・ドアなどのエクステリア)を提供している非鉄金属メーカーです。平均勤続年数は21年で、定着率が高いと有名な会社です。
同社では、社員1人ひとりが個性と能力を発揮して働ける職場づくりを実現しています。そのため、人権ワーキンググループを設置して、全従業員を対象とした教育・研修を実施。そして、「公正「役割」「自律」のもと、成果・実力主義を徹底しており、年齢や人種に関係なく活躍できる職場にしています。
このようなダイバーシティ&インクルージョン宣言をしており、社員が活き活きと働ける職場づくりに成功しているのです。
◆ 平均勤続年数が長い企業の特徴
平均勤続年数が長い企業をご紹介しましたが、3つの共通点があります。
・ ダイバーシティ&インクルージョンを推進
平均勤続年数が長い企業は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。ダイバーシティ&インクルージョンとは「人種」「性別」「年齢」「宗教」「価値観」などの個々の違いを受け入れ、認め合い、活かしていく職場を指します。
多様性を尊重する風土・文化により信頼関係を構築し、努力すれば誰でもビジネスチャンスを掴める社風にすれば、社員がイキイキと働ける職場を実現できるのです。
・ ワークライフバランスを整える
平均勤続年数が長い企業は、社員が働きやすいようにワークライフバランスを整えています。ワークライフバランスとは、仕事とプライベートを両立させて充実した生活を送るための取り組みです。
「無駄な会議を行わない」「業務効率化のために書類を整理整頓する」「業務マニュアルの標準化」などに取り組み、定時で上がれるようにします。
また、社員のライフワークイベントに休暇が取りやすいように、休暇制度を充実させましょう。ワークライフバランスを整えれば、仕事と家庭が両立しやすくなります。
・ キャリア・プログラムを提供
平均勤続年数が長い企業は、社員がキャリアを築くためにキャリア・プログラムを提供しています。キャリア・プログラムが注目される背景には、終身雇用や年功序列制度の崩壊が挙げられます。
従来は、同じ会社で昇進して定年まで働くのが終身雇用が一般的でした。しかし、多くの企業が倒産や解雇の危機を避けられない状態となっています。そのため、社員はスキルを伸ばす必要が出てきたのです。このような背景から、社員のスキルやキャリアを支援するキャリア・プログラムを提供する企業が増えてきました。
キャリア・プログラムを提供すれば、社員に喜んでもらえます。
◆ まとめ
平均勤続年数とは、現在勤務している社員の勤続年数を平均した数字です。新入社員が多く含まれる場合は、平均勤続年数は短くなるため、平均勤続年数=離職率が高いと一概に言えるものではありません。
しかし、国税庁の平均勤続年数は12年となっています。そのため、平均勤続年数が10年以下の場合は優秀な社員が採用しにくかったり、中堅社員が少なく生産性向上が見込みにくかったりします。そのため、平均勤続年数を計算して対策をしましょう。
この記事では、平均勤続年数が長い企業の取り組みまでご紹介しました。ぜひ、これを機会に平均勤続年数を伸ばす取り組みを始めてみてください。
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