バーンアウトは別名「燃え尽き症候群」と呼びますが、耳にした経験がある方もいるでしょう。仕事に対する意欲が失われるだけでなく、犯罪や自殺に至る可能性がある危険な症状です。自殺に至れば、大きな問題となり企業信用力が落ちてしまいます。そのため、企業は従業員のメンタルケアに力を入れましょう。今回は、企業や従業員が取り組める対策方法をご紹介します。
目次
◆バーンアウトとは?
バーンアウトとは、物事に没頭していた人が燃え尽きたように意欲を失うことをいいます。自分の限界を超えて無理に頑張り過ぎて心が折れてしまうことで発生し、鬱病の1種とも考えられています。
1974年に精神心理学者ハーバード・フロイデンバーガーが提唱しました。その後に、社会心理学者クリスティーナ・マスラークがバーンアウトの重症度を測定するMBIを考案しました。またMBIを参考にしながら、2004年に国内で久保と田尾が日本版バーンアウト尺度を作成しました。
バーンアウトで自殺に至ることもあります。従業員が自殺すると、企業信用力が落ちてしまいます。そのため、企業はメンタルヘルス対策を実施して予防しましょう。
・バーンアウトの症状
バーンアウトは精神疾患で、以下のような症状が出やすくなります。
≪主な症状≫
- 朝起きれなくなる
- 仕事のやる気が湧かない
- 仕事で手を抜くようになる
- 無気力になる
- 職場に行きたくない
- アルコール量が増える
- イライラする機会が増える
- 自己嫌悪感を抱くようになる
- 人と関わりたくないと思う
状態が悪化すると、家庭の崩壊、犯罪や自殺などにつながる恐れがあるため気をつけましょう。
◆バーンアウトになる原因
バーンアウトは恐ろしい症状ですが、どのような人が発症するのでしょうか?ここでは、バーンアウトに陥る人の特徴について解説します。
・完璧主義
完璧主義な人は、自分を追い詰めて仕事を完璧にこなします。非常に高い自己基準を持っていて、自己批判する特性を持っています。
仕事の失敗への恐怖心があり「仕事で失敗は許されない」と自分の限界を超えて働く完璧主義な人は慢性的にストレスにさらされている状態です。その結果、バーンアウトに陥ってしまいます。
・真面目
真面目な人は責任感が強くて、最後まで仕事をやり遂げます。人に迷惑をかけたくない気持ちが強く、途中で仕事を投げ出すことはしません。与えられた目標が高くても、最後まで成し遂げようとします。
人の役に立ちたいと思う気持ちは大切ですが、必要以上に頑張るためバーンアウトに陥ってしまいがちです。
・業務量が多い
バーンアウトは完璧主義や真面目など個人要因ではなく、環境要因でも発症します。環境要因としては、業務量が多いことが挙げられます。
長時間労働や厳しいノルマが課せられていて、ストレスにさらされている状況で働き続けるのは危険です。また、業務をこなしているのに昇給が見込めないなど、正当な評価を受けられなければ、心が折れてバーンアウトになります。
業務量が多い職場は、さまざまな弊害が出ます。どのような弊害が出るかを詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:『業務過多で従業員が退職!人間関係や労働環境の悪化を解消する方法とは』
◆バーンアウトを測定する方法
従業員のバーンアウトを測定したい場合は、日本版バーンアウト尺度を利用しましょう。最近6ヶ月の間にどのような経験をしたかチェックをしておくことで、バーンアウトになるかどうかを判断できる便利なツールです。
「我を忘れるほど仕事に熱中することがある」「仕事のために、心のゆとりがなくなったと感じることがある」など17項目に「はい」「いいえ」で回答していくだけです。
◆従業員ができるバーンアウトの予防方法
バーンアウト尺度が高い場合は、どのように予防すればよいのでしょうか?ここでは、従業員自身ができる対策方法をご紹介します。
・しっかりと休む
休憩を取って気持ちをリフレッシュさせて、感情を落ち着かすことが大切です。なぜなら、完璧主義や真面目な人は仕事に熱心に取り組んでいて、疲弊していても自覚できないためです。
疲労が蓄積されるとバーンアウトに陥ってしまうため、しっかりと休みましょう。就寝30分前はスマートフォンをOFFにするなど心がければ、睡眠の質を上げられます。
・運動する
運動をすると幸福感をもたらす神経伝達物質エンドルフィンが分泌されます。エンドルフィンがストエレスを緩和してくれるため、健康を維持しやすくなります。運動をする場合は、ウォーキング、軽いランニングやサイクリングなどストレス緩和に適している有酸素運動にしましょう。
・オンオフの切り替えをする
リモートワークで働いている人は、仕事とプライベートを分けてオンオフを切り替えるようにしましょう。
業務時間を過ぎたらPCやスマホに届くメール、電話を見ないようにして、オンオフの切り替えをして、精神的に休まる時間を設けることが大切です。仕事と物理的に距離を置く時間で緊張感が和らげることで、バーンアウトを予防できます。
・専門家に相談する
心身の不調を感じている場合は、診療内科を受診して専門家に相談をしましょう。診療を受けることで病気かどうかを診断してもらえます。
病気の場合は、薬を処方してもらえたり針灸などの施術をしてもらえたりします。早期発見が立ち直りの早さにも影響するため、少しでも不調を感じたら、専門家に相談するようにしましょう。
◆企業ができるバーンアウトの予防方法
次に企業が従業員のためにできるバーンアウトの対策方法をご紹介します。
・業務負荷を調整する
業務量が多い場合は、業務負荷を調整してあげましょう。なぜなら、バーンアウトは限界を超えた量の仕事をこなすことで発症するためです。
業務量の偏りをなくすために、業務マニュアルを作成して、誰がやっても均一な品質の業務が行えるようにしておきましょう。業務平準化をして、業務量を均一にしてあげることで病気を予防できます。
・サポート体制を整える
上司は部下に仕事の目標を与えて、進捗管理するだけでなく、必要に応じてサポートしてあげましょう。部下が困っているときに上司が相談に乗ったり、一緒に解決してあげることで「1人で仕事の悩みを抱えなくて良いんだ」と気づかせて緊張感を和らげてあげることが大切です。
上司ができる部下のサポートとして1on1ミーティングがおすすめです。1on1ミーティングのやり方を知りたい場合は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:『1on1ミーティングの目的とは?キャリア支援につながる正しい手順を紹介』
・メンタルヘルス研修を行う
従業員にメンタルヘルス研修を受講させて、セルフケアやラインケアの視点を持たせることができれば、メンタル不調の早期発見ができます。メンタル不調の早期発見ができれば回復も早められます。部下や同僚がメンタル不調にならないか気づける環境を整備することも大切です。
・職場の改善をする
従業員の声を反映しながら職場を改善していけば、快適に働いてもらえるようになります。そのため、自社に対する不満などを従業員に尋ねてみましょう。しかし、従業員が本音で回答してくれない恐れがあります。そのような場合は、第三者機関に調査を依頼しましょう。
職場の改善方法を知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:『職場環境の改善方法を手順に沿って解説!問題が起きる原因まで紹介』
◆従業員がバーンアウトになった場合の対処方法
バーンアウトの予防方法をご紹介しましたが、従業員が発症したら、どのように対処すればよいのでしょうか?ここでは、従業員がバーンアウトになった場合の対処方法をご紹介します。
・従業員を休職させる
従業員がバーンアウトになったら休職させます。従業員を休職させる場合は、以下の手続きを行います。
- 就業規則を確認する
- 産業医面談を受けてもらう
- 従業員から診断書を提出してもらう
- 休職命令を出す
- 復職の支援をする
従業員が安心して休めるように復職の支援をしましょう。
・原因を特定させる
従業員がバーンアウトになった原因を特定していきます。従業員から直接聞ける場合は、心当たりとなる問題がないかを聞いてみましょう。相手から本音を引き出すには、第三者に聞いてもらう方法が効果的です。
従業員が心身不調で話が聞けない場合は、「業務負荷は適性だったか?」「目標は高すぎていなかったか?」など問題を仮説立てして改善していきましょう。
・職場環境を改善する
従業員がバーンアウトに陥った原因を特定できたら、職場環境を改善していきます。職場環境の改善には労力がかかるかもしれません。しかし、従業員が離職してしまう損失の方が大きいです。そのため、働きやすい環境に改善していきましょう。
◆まとめ
バーンアウトは物事に没頭していた人が、燃え尽きたように意欲を失うことをいいます。生産性の低下や離職に繋がってしまうため、企業は従業員がメンタル不調にならないように予防をしましょう。
この記事では、従業員自身ができる予防方法、企業が従業員のためにできる予防方法をご紹介しました。ぜひ、これを機会にメンタルヘルスを目的として予防対策をしてみてください。
職場を改善したい場合は、従業員からホンネを聞くことが大切です。ぜひ、従業員のホンネを聞き出したい方は、第三者機関による調査サービス「エグジットインタビュー」をご利用ください。