職場改善や離職対策する際に活用できるハーズバーグ二要因理論をご存知ですか?ハーズバーグ二要因理論を活用すると、どこから改善すべきか計画が立てやすくなるため上手く活用しましょう。
今回はハーズバーグ二要因理論について詳しく解説します。この記事では、職場改善にハーズバーグ二要因理論を活かす方法や成功事例までご紹介しているため、ぜひお役立てください。
目次
ハーズバーグ二要因理論とは
ハーズバーグ二要因理論とは、アメリカ心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した仕事に対するモチベーションに関する理論です。この理論では、仕事の欲求は「衛生要因」と「動機付け要因」に分類できると述べられています。
(1) 衛生要因
衛生要因を満たせば不満を抱かれなくなりますが、満足に繋がることはありません。つまり、衛生要因を満たせばマイナスの状態をゼロにできます。
例: 給与、福利厚生、労働条件、人間関係など
(2) 動機付け要因
動機付け要因を満たせば満足度が上がりますが、なくても不満を抱かれることはありません。つまり、動機付け要因を満たせばゼロの状態をプラスにできます。
例:尊重、昇進、キャリア支援、フィードバックなど
衛生要因と動機付け要因を充実させることで、働きがいのある職場を作れて離職防止に繋げられるようになります。
ハーズバーグ二要因理論の衛生要因
ハーズバーグ二要因理論の衛生要因とは、満たせば不満を抱かれなくなりますが、満足に繋がることがない要因です。
「給与」「労働条件」「人間関係」「上司との関係」などが該当します。マズローの欲求5段階説に置き換えると「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」に該当するものです。
ここでは、衛生要因と、よくある失敗事例をご紹介します。
給与
職務の難易度が高いにも関わらず、給与が低いと従業員の不満となり退職に至ってしまいます。給与は、職務の難易度や重要度、会社への貢献度に見合う額を定めることが大切です。
失敗事例
- 売上に貢献してくれているにも関わらず、事業部全体の売上減少や体制変更で給与額を下げてしまい優秀な社員を逃してしまった
- 資格手当制度の対象となる資格が限定的で、一部の従業員から「資格取得者との給与差が激しい」と不満を持たれてしまった
労働環境
過度の残業など労働環境が悪いと、従業員の心身の影響を脅かすこともあり退職に追い込んでしまいます。そのため、従業員に働きやすい環境を整備するようにしましょう。
失敗事例
- 通常業務とは別でメンター活動も行わなければならず、月90時間の残業をしていた従業員が退職してしまった
- 業務増加のストレスで従業員の持病を悪化させてしまった
- スピードを上げて仕事をすることを求めた結果、体力的に難しいと従業員が退職してしまった
同僚との関係
同僚との関係が悪いと、仕事が円滑に進まなくなり、誰にも相談できず1人で悩みを抱えることになります。
同僚とのコミュニケーションが足りず孤独にさせてしまうと、退職に追い込んでしまいます。そのため、同僚同士がコミュニケーションを取る機会を設けましょう。また、適度な距離感、適切なコミュニケーションを意識することが大切です。
失敗事例
- 会社の忘年会を開催することを突然伝えたところ「もっと早く伝えてもらえませんか?」と同僚同士の仲が悪くなった
- 短期間の研修で新しい部署に配属させたが、部署内で指導ができず孤独を感じた従業員が退職してしまった
- 同僚で集まると会社の愚痴、従業員の悪口ばかりの状態に悩んでいた従業員が退職してしまった
上司との関係
上司が個人的な感情で部下を評価すると、不公平だと不満を持たれやすくなります。退職に繋がる恐れがあるため、上司と部下の信頼関係を築くことが大切です。
失敗事例
- マネージャーが「女なんだから」「男なんだから」という男女格差をしており、従業員が不満を抱いてしまった
- 上司が部下の仕事における悩みを現場に広めてしまった
- 上司の理不尽な指導に耐えられないと従業員が退職してしまった
ハーズバーグ二要因理論の動機付け要因
ハーズバーグ二要因理論の動機付け要因とは、満たせば満足度が上がりますが、なくても不満を抱かれることはない要因です。「尊重」「昇進」「キャリア支援」などが該当します。
マズローの欲求5段階説に置き換えると「承認欲求」「自己実現による欲求」に該当するものです。ここでは、動機付け要因とよくある失敗事例をご紹介します。
従業員の尊重(承認)
従業員の仕事に対する価値観を尊重することで、「会社は私が必要だから大切にしてくれる」ととらえられ、帰属意識を高められます。その結果、仕事に責任感を持って取り組んでもらえるようになり、生産性を高められます。
従業員が尊重されないと感じた場合、生産性が大きく下がるため注意しなければなりません。
失敗事例
- 希望するキャリアを伝えたが、異動が叶うまでの期間が長かった。その結果、従業員が異動先でよいパフォーマンスを出せなくなった
- 上司に返事をしてもらえず、そのまま放置していたら、業務に支障が出てしまった
- 職場の改善案を伝えても即却下されるだけなので、思っていることを言わなくなった
昇進機会の付与(責任&権限)
- 会社に貢献してくれている従業員に昇進の機会を与えると、承認欲求を満たすことができます。また成長機会を与えられて、意欲的に働いてもらえるようになります。
- 昇進の機会を与えなければ、仕事がマンネリ化してしまいモチベーションが低下してしまうため注意しなければなりません。
失敗事例
- 本部異動を希望していた従業員の苦手な売上実績が評価基準で、キャリアチェンジに現実味を感じられないとモチベーションを下げてしまった
- 店長のポストに就きたいが、ポストが少なくて目指せないと従業員のやる気を削いでしまった
キャリア支援(成長・仕事への興味)
- 企業が従業員のキャリア支援をすることで、能力やスキルを磨くようになります。
- また、キャリアパスを明確にすることで、従業員が目標に向かって意欲的に取り組んでいくようになります。つまり、キャリア支援はモチベーション維持に必要です。
- しかし、キャリア支援に失敗している企業は多く見受けられます。
失敗事例
- キャリア形成の道筋が不透明で、計画が立てられない
- 人手不足が解消されない過酷な環境で新しい能力やスキルを磨く余裕がない
- 面接時に伝えられた情報と実際の職務環境やキャリア機会が異なり、不信感を与えていた
職場改善にハーズバーグ二要因理論を活かす方法
ハーズバーグ二要因理論で職場改善する方法は以下の通りです。
STEP1:現状を調査する
まずは仕事に対する満足度と不満度を調査します。
(1) アンケートシステムで調査する
アンケートシステムを活用して、従業員に仕事に対する満足度と不満度を聞き出しましょう。匿名性のアンケート調査であれば、従業員の本音を聞き出すことが可能です。
「部署別」「支店別」などで、データ比較分析できるアンケートシステムを活用すれば、それぞれが抱えている課題を洗い出すことができます。
(2) 従業員にインタビューをする
部署別や支店別の課題を洗い出せたら、所属している人に「このような傾向があるのだけれど、問題がないか」を聞き出します。既存社員より退職者に聞き出した方が、部署別や支店別の課題に対してより深く聞き出せます。
STEP2:現状を整理する
従業員に仕事に対する満足度と不満度を聞き出せたら、現状を整理します。
弊社がおすすめする整理方法は、ハーズバーグ二要因理論を活用して、問題点をグルーピングする方法です。グルーピングすることで、まず、どの箇所から着手すべきなのかが把握できるようになります。
STEP3:職場改善の施策に取り組む
現状を把握できたら、職場改善の項目が多いところから着手していきます。生存の欲求や安全の欲求を満たさないと従業員は離職してしまう恐れがあるため、これらから着手することをおすすめします。
職場改善の施策に取り組んだら、効果が見込めているかを確認しましょう。
アンケートシステムで調査して、回答変化を分析すれば施策の効果測定ができます。
ハーズバーグの二要因理論で職場改善した成功事例
年間60名の退職者の多さに悩んでいたA社は、退職者調査を実施したところ、さまざまな課題を見つけることができました。
全てに対応することは難しいため、立場を超えた行き過ぎた指導や、反対に指導不足、コミュニケーション不足により連携が取れていないなど、事業部によっては統制が取れていない状況から改善していきました。
・役割理解の不足
- 業務マニュアルを作成し、等級制度に反映して役割を明確にした
- 上司が役割を周知しないのは、当事者意識が足りないことが原因のため、評価・キャリアステップと連動して当事者意識を高めた
・スキルギャップ
- 従業員の能力不足により役割を果たせないスキルギャップに対しては、そのような状態に陥ったときに相談できるようにフィードバックの機会を作った
- フィードバックの機会で気軽に相談できるように、管理職研修を実施した
・役割明記がない
- 等級を細分化し、各等級の細かいステップや役割を定義づけをした
このような取り組みにより内部統制が取れ、仕事がしやすくなり離職率を低下させることができました。
まとめ
ハーズバーグ二要因理論とは、仕事に対するモチベーションに関する理論です。衛生要因と動機付け要因を充実させることで、働きがいのある職場を作れて離職を防止できるようになります。
この記事では、職場改善にハーズバーグ二要因理論を活かす方法と成功事例をご紹介しました。そのため、ハーズバーグ理論を上手く活用してみてください。
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