従業員の仕事に対する意欲を持続的に保てるとして、ワークエンゲージメントが注目を浴びています。ワークエンゲージメントは、どのように測定するのでしょうか?どのように数値を上げていくのでしょうか?今回は、ワークエンゲージメントを上げる方法をご紹介します。
目次
◆ワークエンゲージメントとは
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブな気持ちを抱けているかの度合いです。仕事に対してポジティブな気持ちを抱かせるためには「熱意」「没頭」「活力」を沸かす必要があります。
ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授が提唱した理論で、以下のように定義づけられています。
ワークエンゲージメントを向上させると、従業員が仕事に対して能動的に働くようになるため、生産性を上げられます。また、従業員が仕事にやりがいを感じながら働けているため、離職防止の効果も見込めます。これらの効果が持続的に続くため、ワークエンゲージメントが注目されているのです。
・ワークエンゲージメントの要素
・ワークエンゲージメントが注目される背景
ワークエンゲージメントが注目される背景には、労働者不足の問題があります。パーソルホールディングス『労働市場の未来推計2030』によると、2030年には644万人の人手が不足すると述べられています。1人の求職者が仕事を選べる売り手市場となっており、人材確保が難しくなってきました。
また、終身雇用制度が終わりを迎えていて、自分のキャリアを磨く必要があると認識され、人材の流動化が起きやすくなりました。そのため、企業は従業員が離職してしまわないように、ワーク・エンゲージを高める必要が出てきたのです。
◆ワークエンゲージメント向上の効果
ワークエンゲージメント向上に取り組むと、どのような効果が見込めるのでしょうか?ここでは、ワークエンゲージメント向上の効果について解説します。
・従業員の健康を維持できる
ワークエンゲージメントを高めると「仕事にやりがいを感じられる」と満足度が上がるため、仕事のストレスが軽減されます。仕事のストレスに耐えられたり、疲れが回復しやすくなったりするのです。
メンタルヘルス対策になるため、メンタル不調により休職や退職が起きることがなくなります。厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」では、メンタル不調により連続1ヶ月以上の休業、または退職した人の割合は10.1%となっています。10人に1人がメンタル不調になるため、従業員の健康維持をするためにも、ワークエンゲージメントを上げていきましょう。
・生産性を上げられる
ワークエンゲージメントを高めると、従業員は「会社に貢献したい」と思うようになり、能動的に仕事するようになります。自分の能力を最大限に活用して働くため、組織全体のパフォーマンスが上がります。その結果、生産性が上がっていくのです。
また、ワークエンゲージメントが高い従業員は自己研鑽を楽しみます。自分のキャリアのためにスキルを磨く人が増えるため、より生産性を上げていけます。それだけでなく、新たなアイデアを生み出してもらいやすくなることもメリットです。
・顧客満足度が上がる
ワークエンゲージメントを向上させると、従業員が熱意を持って働くようになるため、対外的信用度が上がります。取引先や顧客から「こんなに情熱を持って働く従業員がいて感動だ」と信用されやすくなるのです。顧客から企業に対する信用が上がれば、商品やサービスを選んでもらいやすくなります。その結果、業績を伸ばしていくことができます。
・離職を防止できる
ワークエンゲージメントを向上させると、従業員が「この会社で長く活躍していきたい」と思うようになるため離職を検討しなくなります。つまり、従業員の離職を防止が見込めるのです。離職を防止できれば、従業員にかかる採用コストを抑えることができます。
リクルートホールディングス「就職白書2020」によると、新卒採用には93.6万円、中途採用には103.3万円の採用コストが掛かっていると述べられています。これらの採用コストをムダにせずに済むこともメリットです。
◆ワークエンゲージメントの測定方法
ワークエンゲージメントを測定する方法には、3通りの方法があります。
※ワークエンゲージメントを測定できる各種ツール、サイトをご利用ください。
◆ワークエンゲージメントを高める方法
ワークエンゲージメントを高めるためには、資源を見直す必要があります。ここでは、具体的な方法をご紹介します。
・業務量を調整する
1人当たりの仕事量が多すぎたり、配分に偏りがあると従業員は不満を貯めていきます。そのため、仕事量が見合っているかを把握して、必要に応じて業務量を調整してあげましょう。
とくに、優秀な社員に多くの業務を与えてしまう方は多いですが、ワークライフバランスを保てないと心身共に疲弊させてしまうことになります。最悪の場合は、優秀な人材が離職してしまう恐れがあるため、業務量が適正であるか見直してみましょう。
業務過多の恐ろしさについて詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『業務過多で従業員が退職!人間関係や労働環境の悪化を解消する方法とは』
・部下を信頼して裁量権を付与する
上司は部下を信頼して裁量権を付与することで、ワークエンゲージメントを向上させていけます。とくに向上心が高く成長できる機会を求めている社員に効果的な方法です。
裁量権を持って仕事に取り組むと責任も増えますが、自分で物事を達成したときのやりがいを得られます。自分で考えて行動する機会も増えるため、意欲的に働いてもらえるようになります。
・コーチングする
上司が部下とコミュニケーションをしながら気づきを与えると、成長を実感できるようになります。例えば、部下から悩みを相談された場合に解決策を提示するのではなく「どのような解決策があるだろうか?」と尋ねて、自分自身で考えさせるのです。このようなコーチングを行うことで、部下が自発的に考えて行動していけるようになります。
・必要な設備を導入する
従業員が仕事に意欲的に取り組んでもらうためには、没頭できる環境が必要です。そのため、オフィス環境を見直して、使い勝手が悪い設備、備品は買い替えるようにしましょう。また、必要に応じてオフィスレイアウトの変更することをおすすめします。
・多様な働き方を実現する
従業員の仕事に対する価値観を尊重することで、ワークエンゲージメントを上げていけます。そのため、多様な働き方ができるように整備しておきましょう。多様な働き方を実現しておけば、人材確保がしやすくなります。また、育児や介護を理由に従業員が退職せずに済みます。
■多様な働き方
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多様な働き方について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『多様な働き方の種類を一覧表でまとめて紹介[雇用制度や雇用形態]』
・部下の描きたいキャリアを支援する
上司は部下と面談を実施して、どのようなキャリアを描くかを決めて支援していくことで、ワークエンゲージメントを上げていけます。なぜなら「この会社で働けば、自分が叶えたいことが実現できる」と活力が湧いてくるためです。そのため、定期的に面談して目標を決め、目標達成できるように支援していきましょう。
・部下の努力を評価する
部下の努力を正しく評価することで、仕事の意欲を上げることができます。そのため、3つの基準で正しく評価するようにしましょう。
- 能力評価:業務に必要とされている能力の有無を評価する
- 成果評価:定めた期間で、どの程度、達成できたかを評価する
- 情意評価:仕事への意欲や周囲とのチームワークを評価する
◆ワークエンゲージメント向上に成功している企業事例
出典元:『Sansan株式会社』
Sansan株式会社は法人向け及び、個人向けの名詞管理サービス「Sansan」を提供している会社です。導入企業7,000社、シェア82%を占める顧客満足度の高い企業で有名ですが、ワークエンゲージメントも高いです。同社は以下のような取り組みで、ワークエンゲージメントを上げています。
◆まとめ
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブな気持ちを抱けているかの度合いです。仕事に対してポジティブな気持ちを抱かせるためには「熱意」「没頭」「活力」を沸かす必要があります。
ワークエンゲージメントを向上させれば、従業員が意欲的に働けるようになり、生産性を上げていけます。また、離職防止にも効果を発揮します。この記事では、ワークエンゲージメントの測定方法から、高め方をご紹介しました。これを機会にワークエンゲージメント向上の施策を検討してみてください。
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